子供をさらう尻切れ馬の話 1/2

馬

 

これは、私が大学生の頃、年末に帰省した時の体験談です。

 

地元はそこそこの田舎で、駅付近こそビルが多く立ち並んでおりますが、少し離れると田畑が多く広がっています。

 

実家も田畑に周りを囲まれる、といった形です。

 

その日の夕方、確か夕食時よりは前だったと思います。

 

私は某通販サイトで頼んだ品物の代金支払いの為、コンビニに行っていました。

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それは『馬』だったのでしょう

代金の支払いだけだとちょっと迷惑かなと思い、缶コーヒーもついでに買って外へ出ました。

 

猫舌なものでゆっくりコーヒーを飲みながら、手持ち無沙汰な感じで周りを見ていました。

 

新しい家がいくつか建っているものの、田畑が多く、昔と景色はそう変わりません。

 

すると、稲刈りも済んで稲の付け根の部分しか残っていない田に人影が見えました。

 

犬の散歩か案山子(かかし)だろうかとしっかり見直してみると、どうも違うようでした。

 

その時の私にはそれが何なのか判別が付きませんでしたが、それは『馬』だったのでしょう。

 

“判別が付かなかった”というのは、遠目には分からなかったということではありません。

 

顔のつくりが大体わかる程度の距離でしたから。

 

なぜ判別が付かなかったかと言えば、馬としての原型を留めていなかったからです。

 

下半身と言うべきか、後半身と言うべきか、とにかく胴の後ろ側半分が消滅したような形だったのです。

 

そして顔は、目玉辺りから何か黒い液体のようなものが垂れているような感じでした。

 

怪談こそよく読みますが、生まれてこの方心霊現象の類に遭遇したことのない私は、それが何なのか全く分からず、コスプレか何かだとしても気味が悪いと思いつつ、飲みかけのコーヒーをゴミ箱に入れて急いで自転車で家まで帰りました。

 

途中、何度か振り返りましたが、追いかけてくるようなことはありませんでした。

 

夕食時になり、母に地元の怪談話について聞いてみました。

 

もしかしたら心霊系の話かも・・・と、期待や興味が恐怖より大きかったのだと思います。

 

例の馬については、母に心配させたくないという思いから話しませんでした。

 

しかし、母の知っている事で関係のありそうな話はありませんでした。

 

「自殺のあったマンションで霊が出る」、「山の方にある○○会社の社宅は以前病院だったのでヤバい」、「近くに行くと無性に首を吊りたくなる木」という感じのラインナップで、これはこれで興味を惹かれますが実際に行くと怖そうなので行きたくはありません。

 

今思い返せば、母は市内とはいえ今の家に嫁いで来た身なので、地元の話はあまり詳しくなかったのかもしれません。

 

それから夜までは特に何もありませんでした。

 

奇妙な体験で妙なモノだとは思いつつも、もう一度同じ場所まで確かめに行く勇気もなく、いつも通り二階の自室でゲームをしたりネットサーフィンをしていました。

 

すると、実家で飼っている犬が「クゥーン、クゥーン」と鳴き始めましたのです。

 

野良猫か野良犬でも来たのか?と思っていると、鳴き声に別の音が交じりました。

 

「ドン、デン、ドン」と、和太鼓のような音です。

 

おかしい、と私は思いました。

 

地元では神輿(みこし)と太鼓を使った祭があり、祭の前や期間中は街のあちこちで太鼓の音を耳にします。

 

しかし祭の開催時期は秋で、今は年末。

 

それに祭の期間内でなければ、直前の時期の練習も近所迷惑なので夜まではやりません。

 

私には、その音が段々と近づいているように感じました。

 

遠くで聞こえるような音から、身体に響いてくるような音となっていきました。

 

そこまで大きな音になっても、別の寝室にいる母が起きた様子がないのも不可解でした。(なぜなら、中学生の頃までは夜起きて少し物音を立てていると起きてきて怒られていたので)

 

私はカーテンを少し開け、外を見ました。

 

家の周りの街灯は少なく、何も見えないはずでした。

 

しかし、庭には紫にぼんやりと光る何かがありました。

 

光っているというよりは、それの周囲がランプのような紫の光で照らされているようでした。

 

そして照らされているものは、先ほど見た『後ろ半分のない馬』でした。

 

私はすぐにカーテンを閉め、窓と逆側の壁際に座り込み、きょろきょろと部屋を見回しました。

 

その馬が窓から入ってくるのではないか、と思えてならなかったのです。

 

太鼓の音はずっと鳴り続けていました。

 

家の周りをあの馬がぐるぐると回っているのではないか、と思いました。

 

ノートPCやゲーム機を手元に手繰り寄せ、とにかく気を紛れさせようとしましたがうまくいかず、少し間をおいては窓や部屋の角、ベッドの下なども気になってしまい、気がどうにかなりそうでした。

 

それから2~3時間が過ぎた頃でしょうか、しばらくすると太鼓の音が小さくなっていることに気付きました。

 

音はどんどん小さくなり、完全に聞こえなくなっても外を見る気は起きませんでした。

 

結局、確認したのは日が昇ってからのことでした。

 

庭におかしな箇所はありませんでした。

 

朝食時、母に昨夜のことを聞きましたが、特に何も聞かなかったようでした。

 

太鼓を使う行事の話も聞いていないそうです。

 

(続く)子供をさらう尻切れ馬の話 2/2

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