夜の高速道路をゆっくり走る銀色のマーチ
これは、夜中に高速道路を車で走っていた時の話。
走行車線を走っていると、100メートルほど前にいる車がいきなり追い越し車線に車線変更するのが見えた。
しかし、俺の前方にはその車しかなく、もちろん俺が追い越そうとしているわけでもないので意味不明な車線変更だった。
直後、すぐにその車は走行車線にスーっと戻ったが、かなり低速だったこともあり、俺は追越車線から抜いていった。
追い抜く際に車を確認すると、車種は銀色のマーチで、ナンバーが『7787』と覚えやすく印象に残った。
ルームランプを点けたまま走行しており、運転手はやたら姿勢の良いスーツ姿の白髪の老人で、助手席にはピクリとも動かない老婆が座っていた。
マーチを追い抜いてしばらく走っていると、前方にまた同じくらい低速で走る銀色のマーチがいた。
少しゾクリ・・・としたが、ナンバーを見ると『7788』。
さっきのマーチと1つ違いだったのでツレかな?と思い、車内を確認すると、やはりルームランプが点いていたが、運転手は30代くらいで、チェック柄のシャツを着た男性が一人だけだった。
その車も追い越してまたしばらく走っていると、またまた低速で走る銀色のマーチが前方に見えてきた。
ルームランプが点いている。
ナンバーは『7787』。
運転手は姿勢の良いスーツ姿の白髪の老人で、助手席にはピクリとも動かない老婆が座っていた。
もちろん俺は途中休憩などせずに走り続けていたし、眠くもなかった。
現世の高速道路は一本道だが、あちらの世界ではループしているとでもいうのだろうか。
(終)