夜中に後ろから付いてくる車

昨年末の話。

 

俺は会社の飲み会が終り、

同僚に近くまで車で送ってもらった。

 

そこから家までは

歩いて帰っていた。

 

その時すでに夜中1時を

まわっていたくらいの時間。

 

俺ん家(アパートで一人暮らし)

の周りは、

 

夜は全く人影の無い、

田舎の住宅地。

 

で、その時も、

 

車一台がやっと通れる

ぐらいの細い道を、

 

歩いて家に向かっていた。

 

俺は酔っぱらいながら

しばらく歩いていると、

 

後ろから車の来る気配がしたので、

端に避けて歩き続けた。

 

ふと後ろを見ると、

 

その車は夜中なのに

ヘッドライトも点けず、

 

じわっと、やたらと遅い速度で

走ってきた。

 

俺は気にせずそのまま

歩き続けていた。

 

が、その車が一向に俺を

追い抜いていかないので、

 

俺は立ち止まって、

その車を先に行かせようと待った。

 

しかし、その車は

俺のすぐ後ろくらいまで来ると、

 

何故か止まった。

 

走り出す気配もなかったので

俺はまた歩き出すと、

 

その車もゆっくりと走り出した。

 

俺は少し気味悪くなったが、

 

『もしかして、友達か知り合いの悪戯か?』

 

と思い、

その車の運転席を見た。

 

夜中だし、

ハッキリは見えなかったが、

 

運転しているのは

髪の長い女のようだった。

 

俺は、

 

『何だ、女か。

逆ナンパでもしてくるのか』

 

などと、気楽に考えながら

再び歩き出した。

 

すると、その車が

今度は俺の真後ろ、

 

ぶつかるかぶつからないか位まで

接近して来て、

 

徐行しながら俺に付いてきた。

 

さすがに危なねーなぁ

と思った俺は、

 

文句を言おうと

その運転手の方を見た。

 

その女は、

俺の方を睨んでいた。

 

無表情で、

冷たい瞳で、

 

俺がこれまで見た事もない

恐ろしい表情でこっちを見ていた。

 

俺は普通でないその女を見て

急に怖くなり、

 

走って家に向かった。

 

すると、その車も今度は

スピードを上げて付いて来た。

 

車の通れない細い道に入り、

振り返ると車はもういなかった。

 

やっと家に着き、

 

急いで鍵を掛け、

テレビをつけて、

 

しばらく『さっきの奴は何なんだ』

とか考えながら、

 

だいぶ気持ちが落ち着いてきた

頃だった。

 

玄関の方でガチャガチャと、

音がした。

 

俺はさっきの事もあり怖かったが、

恐る恐る見に行くと、

 

誰かが外から鍵の掛ったドアノブを、

凄い勢いで回していた。

 

凄く怖かったが勇気を出して、

ドアの覗き穴から外を見てみた。

 

誰もいない。

 

俺は急いで部屋に戻り、

 

布団を被って震えながらも、

もう今夜は眠ろうと思った。

 

それから一時間ほど経って、

何事もなくうつらうつらしていた時の事。

 

だいぶ落ち着いた俺だったが、

何気に窓の方に目をやった。

 

夜空が見えただけだった。

 

喉が乾いたのでジュースでも飲もうと、

台所まで行こうとした時。

 

いた・・・。

玄関先に立っていた。

 

今度はハッキリと見た。

 

異常に長い、

真っ黒な髪をした女が。

 

冷酷な瞳でこちらを見ながら

立っていた。

 

(終)

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