伐採するはずだった木がたった1日で
これは、森林組合で聞いた話。
山で木を育てる過程で、木を間引くことを間伐(かんばつ)という。
間伐の対象となるのは、発育や形質が悪かったり、あるいは良い木の邪魔になるようなもので、大抵の場合は山主か山守が決める。
間伐の前に山を巡り、一本一本の形質や枝張りなどを見てから間引く木を見極め、マーキングしていく。
ある日のこと、山主が自分の山に入り、間引く木にマーキングの印となるビニール紐を巻き付けた。
翌日、作業員と共にマーキングした木を確認しに現場へ行くと、寄り添うように立っている2本の木が目についた。
共に発育も形状も良く、伐採するには惜しい木ではあったが、このように接近している場合はどちらかを切らなければならない。
ところが、その2本の木にはどちらにもマーキングがなかった。
さては紐を巻き忘れたのか・・・と思い近づいてみると、2本のうち太い方の木の根元にブチ切れたビニール紐が落ちている。
紐を拾い上げて木に巻き付けてみると、明らかに長さが足りない。
「こいつ、切られるのが嫌だからって一晩で太りやがったんだなぁ」
結局、その木は山主から『デビルマン』と名付けられ、今に至るまで大切にされているそうだ。
(終)