山のものを勝手に持って来てはいけない
これは、伯母から聞いた『石』にまつわる不思議な話。
ただ子供の頃に聞いた話なのでその場所はよく覚えていないけれど、確か群馬のどこかの山と言っていたような気がする。
それは伯母がまだ新婚の頃、夫(私の伯父)と二人でドライブに出かけた時のこと。
山道をドライブし、山道を二人で歩き、持参したお弁当などを食べて新婚のデートを楽しんだ。
その帰り際、伯母は漬け物石にちょうどいい大きさの石を一つ見つけ、持って帰ることにした。
伯父も賛成し、その石を車のトランクに積む。
そしてさて帰ろうと思ったけれど、なぜか車が動かない。
あれこれと手を尽くしても、一向にエンジンはかかる気配を見せない。
途方に暮れた二人は、ふと『あの石のせいではないか?』と思い当たる。
「やっぱり山の神様が持っていくなと言ってるのかしらねぇ」
伯母はそう言ってトランクから石を降ろし、元の場所に戻した。
すると、車は何事もなかったかのように動いたという。
「だからね、山のものを勝手に持って来ちゃいけないのよ」
伯母はそう、私に諭してくれた。
あとがき
石というのは、むやみやたら動かしたり、ましてや持って来たりするものではないそうで。
よく父がそんなことを言っていた。
なんでも、その行為は『災いを招く』のだとか。
特に、川の石は御法度らしく、川の石を持ち込んだ家で病人が出た、なんてことをよく聞かされた。
まだ子供だった私は冗談程度にしか聞いていなかったけれど、案外本当なのかもしれない。
(終)