大きなお狐様との不思議な出会い
これは、忘れもしない小学3年生の頃にあった話。
田舎住みの私と、幼馴染で家族ぐるみの付き合いの大地君は、いつも二人で廃墟や森の探検に出かけていた。※名前は仮名
その日も山に出かけた。
自転車を山の入り口に停めてハイキングコースを歩いていると、コース脇に獣道を発見した。
モッフン!
二人で獣道をワクワクしながら進むと、雨水を溜めるダムのような場所に出た。
もう使われていないのか、蔦でぐるぐる巻きになっている。
寂れたハシゴが掛かってあり、中を見てみようと私が先に上った。
中はどうせ枯葉や虫で汚いんだろうな・・・と思っていたら、真っ白い雲のような綿のようなものが敷き詰まっていた。
二人で縁に立ち、「なんだこれー?」と言いながら触ろうとすると、それまで無風だったのに突然後ろから強風が吹き、二人して中に落ちてしまった。
しかし、顔から落ちたのに全然痛くない。
モッフン!という感じだ。
「大地君、大丈夫!?」と聞こうと思って起き上がると、目の前には2階建ての家くらいありそうなデカいキツネが座っていて、ニンマリ顔でこっちを見ていた。
私たちは恐怖よりもびっくりしすぎて、ポカーンとなった。
すると、横に居たらしい大地君が私の手をガッと掴み、「落ちてごめんなさい!」と叫んだ。
大地君の手が震えているのが分かり、私も「ごめんなさい・・・」とポカーンが抜けないままマヌケな声で言った。
キツネはニンマリ顔のまま体の向きを変えて、デカいしっぽをこちらに押し付けてきた。
「すげぇ!モフモフ!うわわわー!」と喜んでいると、腹か喉の鳴るような音が聞こえ、気がついたら真っ暗なハイキングコースでへたり込んでいた。
「今の何!?」
「今の何!?」
二人同時に向き合って叫ぶと、その瞬間に安心して涙がブワッと溢れ、私たちは手を繋いで泣きながらハイキングコースを歩いて戻った。
ただ、昼の2時くらいだったはずが、大地君の腕時計を見るとなぜか夜中の0時を過ぎていた。
山を降りるとパトカーがあり、親族が勢ぞろいしている。
私たちの姿を見るや、私の母と大地君のお母さんが泣きながら突進してきた。
「どこ行っとん!何かあったんかと思って生きた心地せんかったわ!バカタレ!」
顔をぐしゃぐしゃにして抱きついてきた母を見て、私も「ごめんなざぁぁい」と大泣きに。
父はへたり込んで泣いていた。
その後、家に帰ってから経験した出来事を伝えた。
どうせ信じてくれないんだろうな・・・という気持ちだったが、なぜか母と大地君お母さん、祖父母、それにおじいちゃんとおまわりさんが信じてくれた。
母と大地君のお母さん曰く、「山から降りてきて抱きしめた時、なんか獣の匂いがしたのと、動物の毛があちこちに付いていたから」、らしい。
おじいちゃんとおまわりさんは、今まで何度かあの山で「ソレを見た」という人がいたからだと。
後日お供えに行った時、ダムのようなものがなくて原っぱになっていた。
その場所に皆でお供えをして、帰った。
(終)