部活後の部室で怪談話をしていると突然
気持ちの整理にお話させていただきます。
高校の部活後のバス待ちが暇なので、部室で怖い話をするのが定番になっていました。
ただ、怖い話と言っても大体はオチが笑える話だったりして、ふざけたものばかりです。
部室に残っているのが顧問にバレないよう、いつものように電気を消し、ドアはアンプで塞いでいました。
その日のメンバーは僕と、1つ上の先輩が2人。
まだ外が明るくムードが出なくて、そろそろバス停に行くか・・・なんて喋っていると、ドアを叩く音がしました。
顧問か!?と思い、3人で息を潜めます。
すると、ドア越しに去年卒業した菊池さんの声で、「なんで閉めてんの?開けてよー」と聞こえてきました。※名前は仮名
菊池さんはイタズラが好きな人なので予告なく遊びに来たのかと思い、ドアを塞いでいたアンプをどけようとしたところ、先輩の一人に止められました。
菊池さんとバンドを組んでいた先輩です。
「菊池さんは今日大学で用事があるって言ってたし、スタジオ練習も断られた。今ここにいるはずがない」
そう言われて、僕は固まってしまいました。
でもドア越しに聞こえる声は確かに菊池さんの声だったので、先輩自身も不思議な顔をしていました。
そうこうしているうちにも菊池さんらしき者はドアを叩きながら、「えー、なんでー、ひどい!ないわ!ほんとないわ!ここで泣くよ?歌うよ?ジングルベルでいい?」と、訴えかけ続けてきます。
ジングルベルは菊池さんの持ちネタで、言葉遣いも、声も、全部が確かに菊池さんなのに、何故か不気味でなりませんでした。
いっそのこと豹変して、全く違う声で「アケロォォォォ」と言ってくれた方が気が楽だったかもしれません。
いつもの菊池さんのままだというのが、“より開けてはいけない”という空気にしました。
耐えられなくなった僕たちは、菊池さんに電話をかけることにしました。
「菊池さん、今どこですか?」
「え?何?大学だよ?」
そう言われた瞬間にドアの向こうから聞こえていた声も音も止み、一気に怖くなって全員で窓から逃げ出しました。
そして逃げている途中に電話を切ってしまったようで、心配した菊池さんが折り返し電話をかけてきました。
「お前ら何なの?てか、さっき後ろでスゲェ叫び声してたけど、何?」
菊池さんの声に聞こえていたのは、どうやら僕たちだけだったようです。
これが去年4月の話です。
これ以降、僕たちにも菊池さんにも何も起きていません。
ただ、未だに部室が怖いです。
(終)