学校の男子トイレの個室にて

トイレ

 

俺には霊感など無く、

霊というものを目視したことはない。

 

基本こういうカテゴリは否定派だろう。

 

だが、唯一あの時に体験した出来事は、

“ソレの仕業”以外で説明がつかず・・・

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未だ納得のいく答えは得られていない

あれは、俺が小学校中学年くらいの頃。

 

5時間目の授業中、

一人の男子同級生が突然泣き出した。

 

先生がどうしたのかと駆け寄ったが、

泣き出した同級生は無言のまま俯いている。

 

しばらくして原因が判明。

 

その子を中心に異臭が漂い始めた。

 

どうやら大便を漏らしているようだ。

 

「早くトイレに行ってらっしゃい」

 

先生がその子を気遣って

小声で話しかけていたようだが、

 

子供たちは「クセー」「汚ねー」の大騒ぎ。

 

その当時の年齢の子供たちにとっては、

典型的な祭りネタだ。

 

教室中から一斉にバッシングの嵐。

 

状況に耐え切れず、

泣きながら教室を飛び出す同級生。

 

しばらくの間、教室はお祭り状態だったが、

先生の叱咤で次第に鎮静化していく。

 

授業を再開し、

10分以上経過しただろうか。

 

飛び出して行った同級生が

教室に戻って来ない。

 

「あなたたちが大騒ぎするから

教室に戻って来れなくなったんでしょ!

 

トイレに行って謝って来なさい!」

 

先生が言う。

 

渋々同級生を連れ戻しに、

近辺の席の男子5名でトイレに向かった。

 

トイレは教室のすぐそば。

 

中を覗いたところ、

二つある個室のうち一つが閉まっている。

 

同級生は当然その中に

隠れているものだと思われた。

 

「ごめんね~」

「もうからかわないから出といでよ~」

 

連れ戻しに向かった男子たちが、

それぞれ閉まっている個室に向かって話かける。

 

何度か話かけるが応答が無く、

段々とめんどくさくなってきた。

 

・・・とはいえ、

 

連れ戻さないことには教室に戻れず、

さらに個室に向かって話しかけた。

 

『やだ!!』

 

ようやく個室から応答があった。

 

連れ戻しに行った5名は

めんどくさいという意思表示をしながら、

 

さらに説得にあたった。

 

それから5分くらい経過しただろうか。

 

個室からはまた応答が無くなり、

段々じれったくなってきた5名は、

 

外側から鍵をこじ開ける方法を思いつく。

 

個室の扉は外側から鍵が解錠できる

形式のものとなっていた。

 

鍵をこじ開けるところを察知されないように、

一人がゆっくりと鍵を解錠する。

 

その間、

残りの4名は話かけ続けていた。

 

ガチャリ。

 

解錠が成功し、

扉を勢いよく開けた5名は驚愕した。

 

個室の中には誰も居なかったのだ。

 

不可解な点がもう一つ。

 

そこは和式トイレだったのだが、

 

便器の両脇に一つずつ、

便所用スリッパが並べられていた。

 

5人は、しばらく絶句して立ちすくんだ。

 

事態を把握しようと、

合理的な思考がいくつも浮かんだ。

 

隣の個室に上の隙間から移ったのか。

 

実際は女子トイレに逃げ込んでいて、

そこから「やだ!!」と言ったのか。

 

確認したが、

いずれも否定された。

 

5人は、とりあえず教室に戻ることにした。

 

が、トイレを5人揃って出た時・・・

 

飛び出して行った男子同級生が、

 

トイレから少し離れた階段を

上ってきたところだった。

 

「・・・お前どこに居たんだよ?」

「ここのトイレに居たんじゃなかったの?」

 

『体育館のトイレに居た・・・』

 

体育館は完全に別館となっていて、

 

3階にある教室から別館の体育館までは

かなり離れている。

 

ただ・・・

 

5人以上に青ざめた表情をしていたのが、

その同級生だった。

 

もうトイレが間に合わなかったことによる

ものではないようだ。

 

「俺ら、お前の声をこのトイレで聞いて、

てっきり個室に籠ったのかと思ってさ。

 

扉を開けても誰も居なくて・・・」

 

『僕も体育館のトイレに居たら君らが来て、

 

何回も”出て来い”って言うから個室から出たら

誰も居なかった・・・

 

体育館は誰も使っていなくて、

怖くなったから戻って来た』

 

しばらく5人と1人は目を合わせたまま、

そして言葉を失った。

 

その後、問題のトイレと体育館のトイレで

声が伝達されるか検証してみたが確認できず・・・

 

校舎の設計から考慮しても、

まず有り得ないことのようだった。

 

今でもたまに思い出すが、

未だ納得のいく答えは得られていない。

 

(終)

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