一人でワンコのお散歩をしている時にだけ
これは今も続いている、ほんのりと怖い体験話。
私の家ではワンコを一匹飼っている。
そして毎日7時と19時の2回、お散歩に行く。
朝は家を出て右に、夜は左に曲がるコースを歩く。
だけど、どちらのコースをお散歩していても、歩き始めて20分くらいの所にいつも同じ人が立っている。
もちろん、朝と夜は違う場所に。
それに、その人が着ている服は女性物だけれど、顔と声はおじいちゃん。
見た感じでは80歳くらいかな。
背は150センチの私より頭ひとつ分くらい小さいけれど、腰はピンと伸びている。
そして、合唱でよく歌われる大地讃頌をずっと歌っている。※大地讃頌(だいちさんしょう)は1962年に書かれており、それほど古い曲ではない。
何度か時間をずらしてお散歩してみたけれど必ず居るので、違うコースを歩いてみたりもした。
だけど、どちらにせよ家の前の道路は通らないと行き帰りが出来ないから、違うコースで行った時は、その人はその道路に立っている。
でも、仕事に行く時もお散歩コースを通るけれど、その時は居ない。
誰かと一緒にお散歩に行っても居ない。
居るのは、一人でのお散歩の時にだけ。
その人を見るようになってからもう2年くらいになるけれど、1回だけ俯いている日があった。
その日は、お手玉をニギニギしていて、ジャリジャリとお手玉の音をさせながら、いつもとは違ってアニメのような可愛い声で「フフフッ」と笑っていた…。
私がワンコをお散歩するのは平日だけで、土日は父が当番。
そして父も、お散歩では毎回その人を見ているようなので、おそらく現世に生きている人だと思う。
近所でも特に変な噂とかはなく、後をつけられたりもしていない、何かされたわけでもないけれど、ほんのりと怖い。
(終)