時が止まった体験談 2/3

時間は朝の3時頃だったかな。

 

そこは墓や神社の多い地域で、

かなり不気味だった。

 

二人の記憶を頼りにそこに向かった。

少しビビりな俺と、ビビりだけど強がるA。

 

1時間は探してたかな。

 

結構時間が掛かって少し明けてきた頃、

Aが突然「ここ覚えてる」、と言った。

 

俺の記憶にはない場所だったが、

Aの言う通りに二人で進んだ。

 

すると、細くて暗い階段があり、

そこを下りると、先細い道に出た。

 

俺は階段なんか降りた記憶は無かったが、

多分、俺が来た方向とは逆だったらしい。

 

そして、俺の見覚えのある道に出た。

軽く辺りを見渡す。

 

そして気付いた。

 

Aが驚いた顔で、俺の腕を掴んでいる。

 

そして、Aが俺の手を取って

走ろうとしていた。

 

俺はAに引っ張られるまま、

その場を離れた。

 

そして気付いた・・・

いつの間にか日が昇っている。

 

時計を見ると、もう既に昼前だった。

 

俺は何がなんだか分からず、

とりあえず変な汗が出てきた。

 

俺はAに引っ張られて、

来たはずの道を走った。

 

この辺の記憶がないんだが、

走ってる途中で気付いた。

 

俺とAは、あの日のAの様に、

『止まっていた・・・』

のかもしれない。

 

とりあえずAと俺は、息が切れるまで

走っていた。

 

走っている間も、頭が混乱していて

よく分からなかったが、

 

Aに「どうしたんだ?」とか、

声をかけていた気がする。

 

そして気付いたら、見覚えの

あるような無いような場所。

 

墓場の辺りの細い道だった。

 

この地域は墓が多いのだが、かなり広く、

しかも民家と隣接している事が多いため

高い塀がたくさんあり、

 

一度入ってしまうと、迷って出られない

雰囲気だった。

 

息を切らしたAと俺は、

ダラダラと汗をかいていた。

 

夏だったから、ポタポタと

すごい量の汗が流れてた。

 

するとAが、突然道の隅で吐き出した。

 

一瞬、やばいものでも見たのか?

とは思ったが、

 

どうやら息切れと水分不足で、

軽い熱中症になった様子。

 

とりあえず近くのコンビニで水を買い、

1時間くらい休憩してた。

 

その間、Aは少しうつむき加減で、

明らかに様子がおかしかった。

 

さっきまでとは違い、ほとんど

言葉を発さなかった。

 

「不思議だったな」とか、

「大丈夫か?」と言っても、

 

「・・・うん」と答えるだけ。

 

が、俺はただAが脱水症状で

気分が悪いのかと思い、

そこはあまり気にしなかった。

 

俺が気になっていたのは、さっきの事。

あの頃のAと一緒の状態だったのか。

 

今まで体験した事の無い現象に、

なんだか奇妙な感覚に陥っていた。

 

そしてAが落ち着いてきた頃、

「今日は家に帰って休むか」

という話になり、

 

わけも分からないまま、

帰宅する事になった。

 

次の日の事だ。

 

やはり俺は前日の事が気になっていて、

Aに電話してみた。

 

何回も電話したが、Aは出なかった。

 

いつもはすぐ返信が来るはずのメールも、

その日ばかりは返って来ない。

 

次の日も、俺はAに電話してみたのだが、

Aからは全く音沙汰なし。

 

俺はやはり、あの日の出来事と

Aの様子が気になって、

バイト帰りにAの家に寄ってみた。

 

家のチャイムを鳴らすと、

Aの妹が出て来た。

 

そして話を聞いたのだが、やはり

Aの様子がおかしいらしい。

 

Aはぼーっとしたまま虚ろで、

ほとんど何も言わず、

食事もあまり取ってないらしい。

 

俺は、あの日何かあったのかと思い、

家に上がらせてもらい、

Aと話してみようとした。

 

Aの様子が気がかりだったが、

Aを驚かせて元気付けようと、

 

尻を半分以上出して、勢いよく

戸を開け部屋に飛び込んだ。

 

Aの部屋の戸を開けると、部屋は

オーディオ(ラジオ)だけがついていて、

 

明らかに精気が抜け落ちたようなAが

座っていた。

 

Aは少し反応してたが、明らかに

いつものノリではない。

 

俺は心配になり、メールの事や体調の事を

心配しつつ、遠回しにあの話を聞こうと思った。

 

 

Aは、少し体調は悪いのだが

大した事は無い。

 

メールは後で返すつもりで、

人と喋る気にはならなかったらしい。

 

そして、本題のあの話。

 

どう話していいのか分からなかった俺は、

真正面から「あの時、何があったのか?」

と聞いた。

 

しかしAは「何も無かった」

としか話さない。

 

少しまずいかなと思ったが、

俺も混乱と興味本位で、

何度も聞いてしまった。

 

するとAは、

「これ以上、聞かないでくれ」

と、ため息のように言い、それ以上は

聞くに聞けなくなってしまった。

 

俺はそれまで、奇妙な体験をしたという事の

興味本位だけで考えていたのだが、

 

Aのここまで変わってしまった姿を見て、

ただただ恐怖感に駆られた。

 

それからはAの事を心配しつつも、

本当に怖くて、

けどやはり気になる日が続いていた。

 

Aのことは気になっていたのだが、

何も聞けない日が続く。

 

気付いたら、Aとは連絡が取れなくなっていた。

 

そして2週間ぐらいして、少し忘れていた頃。

 

俺は友達と遊んでいたのだが、偶然にも

Aのバンドメンバーと街で会った。

 

ライブで何度か話したり、打ち上げで

飲んだだけの関係の奴だ。

 

俺も買い物に疲れていたので、

そいつの連れとの3人で、

駅前のマックに入った。

 

そいつと少したわいの無い話をしてたのだが、

バンドの話になった。

 

すると、Aは少し前から

何故か連絡がつかないらしい。

 

そいつは、俺がその事を知ってると思い、

元々Aと仲のいい俺を気遣って、

あえて口を濁していたみたいだが、

俺はそのとき初めて知った。

 

最後に俺が会ってから・・・確か4日後くらいに、

Aは行方不明になっていた。

 

俺は突然怖くなった。

 

少し身体が震えていたし、

変なギトギトした汗が出る感じがした。

 

結局バンドメンバーにあの話は出来ずに、

連絡先だけ交換してその日は解散した。

 

(続く)時が止まった体験談 3/3へ

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