時が止まった体験談 3/3

何か言い知れぬ恐怖感と、

現状を自分で確認したくて、

 

居ても経ってもいられなくなった俺は、

その日の帰りにAのマンションの前まで行った。

 

俺はAの家の前を通ったが、

家の明かりは点いていた。

 

しかし、Aの部屋の明かりだけは

消えていた。

 

さすがにここまでくると、

俺は怖いってよりヤバいと思い、

 

本当に切り詰められたような

状態だったのを覚えてる。

 

Aの家族にも言わないといけないが、

なんて言ったらいいか分からない。

 

母親は5年前に亡くなっており、

弟はいくら問いただしても

「その頃の記憶が無い」という。

 

Aの母親に話そうとも、

直接『止まってた』現場には居なかったし、

 

Aは『止まってた』話を

してなかったように思える・・・

 

そして行方不明の今、

その事は言いづらかった。

 

何度も自分でも検証したいとは思ったが、

Aは二度目でおかしくなってしまった。

 

そして俺は、そこに行く勇気がなかった。

 

友達に話そうとも思ったが、

追い詰められた俺は、

結局誰にも話せなかった。

 

結局、手段を思い付かなかった俺は、

毎日Aに電話かけたりメールを送った。

 

返信は無いが、メールは送れた。

 

とりあえず一ヶ月以上、

電話は時間帯を変えたりして

毎日かけていた。

 

けど、Aからはずっと、

返信も着信も来なかった。

 

段々、無駄なのかもしれない

と思っていたが、責任を感じてた俺は、

たまにメールをしたりしていた。

 

それから半年、

Aの母親や妹と話す事もあったが、

やはりあの話は出来なかった。

 

そしてAの家族も、俺に関係ある事だと

思っていなかったらしい。

 

俺は責任から、携帯のアドレスを

ずっと変えずにいた。

 

すると、Aが居なくなってから半年経った頃、

突然Aから着信があった。

 

気付くのが遅かった。

着信があったのは二時間くらい前。

 

古い携帯で単純なアドレスだったので、

出会い系メールやワンギリもあって、

基本的に着信は無視していた。

 

Aに電話をかけたが、Aは出なかった。

 

それから二日間、

一日に何度も電話をし続けた。

 

すると二日目に、遂にAが出た。

 

Aはまず、

「今まで出れなくてスマン。

今、遠くの親戚の家で暮らしている」

と言った。

 

そしてAは、

「あの時はスマン。

本当に恐ろしい事があった」

と話し出した。

 

Aの話をまとめると、まず幼い頃の話から

しなくてはならないのだが・・・

 

Aは弟を振り切って、

物陰に隠れようとしていた。

 

そして気付いたら夜だった。

母に手を引っ張られていた。

 

そのときは、本当に記憶がなかったらしい。

 

それで家に帰ったのだが、その頃から

変な夢を見るようになったらしい。

 

まず、自分は洞窟に入っていく。

 

最初は周りが見えるのだが、奥に進むと

真っ暗闇になってるらしい。

 

そして、気付いたら目の前に壁がある。

どうやら洞窟は、そこで行き止まりらしい。

 

すると、足元から風が吹いている。

 

よく見ると足元に穴があり、奥の方に

不思議な光るキノコがあるらしい。

 

そして、そのキノコを覗き込むと洞窟は消え、

自分の周りをキラキラとラメの様に光る黒い影が、

バレリーナのように躍る。

 

まとめるとこういう夢だったと記憶してるのだが、

これで合ってるかは分からない。

 

そして、その半年前の方の話になる。

 

Aはライブの帰り道、俺と一緒に

あの場所に行く。

 

場所は何となくしか覚えていなかったらしいが、

その場所に着いた瞬間、前回と同じ感じに

時間が止まっていた。

 

しかし、今回は何か違ったらしい。

 

なんと、自分の周りを夢で見たのと同じように、

黒い影がクルクルとラメのようなものを

撒き散らしながら回転していた。

 

前回は止まった事すら気付いてなくて、

今回は止まった事には気付いてたらしい。

 

それでAは怖くなり、

最初は動けなかったんだが、段々と

訳が分からなくなってしまっていたらしい。

 

がむしゃらに動こうとしても、

体が全く動かない。

 

この辺の描写はあまり覚えてないが、

とりあえずヤバイと思って必死だったらしい。

 

それで気付くと、回りが明るくなっていた。

やっと体が動いた。

 

気が狂いそうになりながらも、

Aは俺の手を取って必死に逃げた。

 

そして墓で迷い、

疲れ切ったAは嘔吐した。

 

それからは先に書いた通り。

 

一週間は恐怖で食事も喉を通らず、

何も出来なかったらしい。

 

そして、この地を離れなくてはいけない

と思ったAは、親戚の家に行くことにしたらしい。

 

そこは、行動力があるAらしいと思った。

 

何日か親には言ってなかったが、

親戚が連絡を入れたみたいだ。

 

そして、

親戚から家族に連絡があったのを知って、

 

家族に、

「恋愛でいざこざがあった。

この事は他人に話さないで欲しい」

と伝えたみたいだ。

 

Aは、たまに夢でみるキラキラの影と、

昔あった『時が止まった』の話は、

全く関係ないものと思っていたらしい。

 

接点すら考えなかったみたいだ。

 

そして、俺から連絡が来ても

ただ怖かったのだが、落ち着いてみると

俺の事も心配になった。

 

しかも最近は、俺からあまり連絡が来なくなり、

電話したらしい。

 

とりあえずコレで終わりだ。

 

続きは無いというより、

進行形なのかもしれない。 

 

俺はもう一度検証してみたい・・・

 

けど、Aの事もある。

行くべきか・・・

 

Aと連絡を取ったのは、

この後一度だけ。

 

後、時間が説明しにくいのだが

一応言っておくと、

 

Aと電話したのは一年半前、

俺が始めて『止まった』のは2年前だ。

 

半年って書いたのは、

2年前から半年って意味。(笑)

 

(終)

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