別居している父の家へ寄ったら
別居中の父の家に寄ったら、
玄関の鍵が開いていた。
無用心だなあと思いつつ、
中に入った。
しかし、
何故かいつもと雰囲気が違う。
朝だからだろうか。
寝室を覗くと、
差し込む日差しが眩しくて、
よく見えない。
部屋の中に入ると、
見知らぬ下着姿の女が、
父のベッドで眠っていた。
誰・・・この女の人?
まさか、父の不倫相手?
信じられなかった。
別居の理由はこの女かも知れない。
きっとそうだ。
パニックになった私は
近くにあった重い灰皿で、
女の頭を何度も殴った。
汚らわしくして耐えられなかった。
女はすぐに動かなくなった。
我に返り、
怖くなった私は逃げ出した。
それからは、
父の元へは行かなくなった。
父が犯人となり逮捕されるかもと思ったが、
不倫する父など逮捕されればいいとも思った。
怖くてニュースは見られなかった。
怯え続けて数か月。
母から、父が寂しがっているから
一緒に会いに行こうと言われた。
迷ったけれど、
やっぱりあの女の事が気になり、
母と一緒に父の部屋に行った。
父は以前と変わらず元気そうだった。
もしかしたら、あの日のことは
夢だったのかも知れないと思った。
そろそろ帰るかという頃、
覗き込んだ寝室に差し込む夕日を見て、
私はとんでもない事を
してしまったことに気がついた。
(終)
解説
女が住む、『朝日』が差し込む
寝室のある家と、
父の住む、『夕日』が差し込む
寝室のある家を間違えた。
朝日と夕日は同じ窓からは見えない。
つまり、この語り手は、
勘違いで殺人を犯してしまった。