新婚夫婦の邪魔をする不倫女の霊
これは、新婚旅行で伊豆に泊まった時の話。
旅行社にコーディネートしてもらった老舗のお宿で、今は違う系列の会社が新しく立て直したホテル経営になっている。
当時は新婚旅行ということで、角部屋の素敵なお部屋に、錦糸を縫い合わせたお布団まで用意してくださった。
そして内風呂付き。
タイルが斬新な赤色で、お手洗いは内風呂と一体になっている。
知っている人はこれだけの情報で旅館が特定できるくらい、昭和の老舗だった。
もちろん、広々とした外の温泉を使った。
そして眠ろうかなという時、部屋の内風呂から水の流す音が聞こえた。
明かりをつけて確認したが、何もない。
それから眠ったが、しばらくしてお手洗いに立つと「私はここで死にました」と囁き声が聞こえた。
(眠れない!)
しばらくして夫もお手洗いに立ったが、これまた眠れない様子。
お互い何も聞かずに、「眠れないよね。部屋、悪いよね」と会話する。
その後は二人でしっかり手を握り合い、フロントまでエレベーターで下りていった。
大旅館なので、即座に部屋を変えていただいた。
翌日、笑い話として仲居さんにこう言われる。
「あの部屋に不倫のカップルが泊まって、女性だけがお風呂場で亡くなったのだけど、まさか新婚さんの邪魔をするなんて。でも、部屋は絶景だったでしょう」
後日、お代はこちらが何も言わないのに旅行社を通じて返金された。
ちなみに夫が耳元で聞いた声は、「あなた、私と一緒にいこうよ」だったと。
結婚5周年記念の日に教えてもらい、今では笑い話になっている。
(終)