雪山で出会った夏服の女 1/2

先月のことです。

Aと俺は山へ測量に入りました。

 

山の測量に行く時は、

最低3人で行くように

していたんですけど、

 

一緒に行くはずだった奴が

インフルエンザで倒れて、

 

他に手の空いてる人も

居なかったんで、

しょうがなく2人で行くことに

なったわけです。

 

でもやっぱり不安だったんで、

境界を案内してくれる地元のおっさんに、

ついでに測量も手伝ってくれるように

頼みました。

 

おっさんは賃金くれればOKという事で、

俺たちは3人で山に入りました。

 

前日からの雪で、

山は真っ白でした。

 

でもポールがよく見えるので、

測量は意外にサクサク進みました。

 

午前中一杯かかって

尾根の所まで測ったところで、

おっさんの携帯が鳴りました。

 

おっさんはしばらく話をしていましたが、

通話を終えると、急に用事が出来たので

下りると言い出したのです。

 

おいおいって思ったんですけど、

「あとは小径に沿って土地の境界やから、

そこを測っていけばイイから」

って言われて、

 

小径沿いだったら大丈夫かもな、

まぁしゃーないか、

みたいなムードで、

 

結局、Aと俺の2人で

続きをやることになりました。

 

ところが、おっさんと別れてすぐ、

急に空が曇ってきて

天候が怪しくなってきました。

 

「このまま雪になるとヤバイよな」

 

なんて言いながら、

Aと俺は早く済まそうと思って

ペースを上げました。

 

ところで、俺らの会社では

山の測量するのに、

ポケットコンパスって呼ばれている

器具を使っています。

 

方位磁石の上に

小さな望遠鏡が付いていて、

それを向けた方向の方位や高低角が

わかるようになっています。

 

軽くて丈夫で扱いが簡単なので、

山の測量にはもってこいなんです。

 

俺はコンパスを水平に据え、

ポールを持って立っているAの方に

望遠鏡を向けて覗きました。

 

雪に覆われた地面と、

枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、

ポールもAの姿も見えません。

 

少し望遠鏡を動かすと、

ロン毛の頭が見えたので、

 

次にポールを探して、

目盛りを読むために

ピントを合わせました。

 

「あれ?」

 

ピントが合うと、

俺はおかしなことに気付きました。

 

俺たちはヘルメットを被って

測量をしていたのですが、

Aはなぜかメットを脱いでいて、

後ろを向いています。

 

それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、

今見えているのは真っ黒な髪です。

 

「おかしいな」

 

望遠鏡から目を上げると、

Aがメットを被り、こっちを向いて

立っているのが見えました。

 

が、そのすぐ後ろの木立の隙間に、

人の姿が見えます。

 

もう一度、望遠鏡を覗いて、

少し動かしてみました。

 

女がいました。

 

立木に寄りかかるように、

後ろ向きで立っています。

 

白っぽい服を着ていて、

黒い髪が肩を覆っていました。

 

「こんな雪山に・・・なんで女?」

 

俺はゾッとして、

望遠鏡から目を離しました。

 

「おーい!」

 

Aが俺の方に声を掛けてきました。

 

すると、

それが合図だったかのように、

女は斜面を下って

木立の中に消えてしまいました。

 

「なにやってんすかー。

はよしてくださいよー」

 

Aのその声で、

俺は我に返りました。

 

コンパスを読んで野帳に記入した後、

俺は小走りでAの傍に行って尋ねました。

 

「今、お前の後ろに女立っとったぞ、

気ぃついてたか?」

 

「またそんなこと言うて、

止めてくださいよー」

 

笑いながらそんなことを言っていたAも、

俺が真剣だとわかると、

 

「・・・マジっすか?イヤ、

全然わかりませんでしたわ」

 

と表情が強ばりました。

 

Aと俺は、

あらためて木立の方を探りましたが、

木と雪が見えるばかりで

女の姿はありません。

 

「登山してるヤツとちゃうんですか?」 

「いや、そんな風には見えんかった・・・」

 

そこで俺は気付きました。

 

あの女は、

この雪山で一人で荷物も持たず、

おまけに

半袖の服を着ていたんです。

 

「それ、ほんまに

ヤバイじゃないっすか。

気狂い女とか・・・」

 

Aはかなり怯えてました。

 

俺もビビってしまい、

居ても立ってもいられない

心持ちでした。

 

そんなことをしているうちに

周囲はだんだん暗くなって、

とうとう雪が降ってきました。

 

「はよ終わらして山下りよ。

こらヤバイわ」

 

俺たちは慌てて、

測量作業を再開しました。

 

(続く)雪山で出会った夏服の女 2/2へ

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