誰も居ない2階から聞こえる足音
これは、ちょっと不思議でもあり嬉しかった霊体験の話。
我が家は1階が店舗で2階は住居の、家族経営の商店をやっている。
昼ご飯と夜ご飯は2階で祖母が作っていた。
いつも11時と18時頃になると2階からドンドンと足音が聞こえ、「ああ、ご飯作ってるなぁ」と一息つくのが日常だった。
祖母は右脚がちょっと不自由だったので、その足音にも癖があった。
のちに祖母は病気で亡くなり、それからしばらくすると11時頃だけ2階からドンドンと音がするようになった。
なぜか、「あっ、ばあちゃんの足音だ」と嬉しくなった。
ある日の11時頃、1階で両親と私の3人で話をしている時に、またドンドンと足音がした。
父がビックリして「誰もいないだろ?」と聞いてきたので、私は「ばあちゃんがご飯作りに来たんじゃない?」と答えた。
続けて母も、「いつもこうやってお母さんが教えてくれてからお昼を作りにいくのよ。上がっても誰も見えないけどね」と笑顔で言った。
なんだ、母も聞こえていたんだ、と私は嬉しくなった。
しかし父が、「お前らがそうやってばあちゃんを捕まえてると、いつまでも成仏できないんだから許してやってくれ」と言った時、私と母はハッとした。
それからは、ドンドンという音は全くしなくなった。
あれは何だったんだろう。
(終)