祖母が大切にしていたオルゴール
これは、祖母が大切にしていたオルゴールにまつわる不思議な話。
私の祖母は小物を集めるのが好きだった。
私も雑貨が好きなので、よく祖母のものを見せてもらっていたが、その中で特にお気に入りだったのが『オルゴール』だった。
私の時にはどんな曲に
木製のピアノの前にブリキの人形が腰掛けているもので、ネジを回すと人形がまるでピアノを弾いているような動きをする。
曲はディズニーの『小さな世界』。
子供の頃は事あるごとに祖母の部屋に入ってそのオルゴールを聞いていたが、大人になるにつれて次第に回数は減っていった。
そして私が中学生の時、祖母は亡くなった。
大往生だったので、あまり悲しいという感じでもなかった。
久しぶりに覗いた祖母の部屋は、物を大切にする祖母らしく綺麗に整頓され、どれも良い状態で保管されていた。
ふと思い出して、オルゴールを手に取った。
ブリキの人形は変わらずに可愛らしかった。
ネジを回して机に置く。
すると、何故か『さくらさくら』の曲が響き始めた。
桜は祖母が好きだった花だ。
それを聞いた瞬間、無性に悲しくなって大泣きした。
泣いて、泣いて、泣き疲れて、そのまま祖母のベッドで寝て、起きた時にはオルゴールの曲は『小さな世界』に戻っていた。
あれはきっと九十九神みたいなものが、大事にしてくれた祖母の死を悼んでくれたんじゃないかと思っている。
※付喪神(つくもがみ)
日本に伝わる、長い年月を経た道具などに神や精霊(霊魂)などが宿ったものである。人をたぶらかすとされた。現代では九十九神と表記されることもある。(Wikipediaより)
そのオルゴールは今、私の部屋にある。
私の時には曲を変えてもらえるだろうか。
だとしたら、どんな曲だろうか。
少しだけ気になっている。
(終)