お参りは余程の事がなければしない方がいい
これは帰省先で暇だったので、なんとなく近くの神社へ行った時の話。
場所は変わってもやることは変わらず、いつものように小銭を賽銭箱に入れて、ガラガラと鈴を鳴らしてお参りをしていると、小柄なお婆さんがトコトコと近づいてきた。
白っぽい和服に赤い帯をして、腰は90度近く曲がっており、深い皺(しわ)に覆われたカエルのような顔をしている。
なんだなんだと目で追っていると、私の直ぐ隣に並んで拝み始めた。
(おいおい、なんでわざわざ私の居る隣で始めるのよ)
鬱陶しいお婆さんだなぁと思いつつも見ていると、いきなりこちらをギロッと睨んでは「もうお終いだね」と言い、物凄い早足で去って行った。
(え?なに!?)
家に帰ってその出来事を話すと、なぜか親に凄い剣幕で怒られ、こう言われた。
「おまえ、運を盗られたよ」
なんでも、お参りは『参る』に通じて、全ての面で無防備になるらしい。
そして、そこを狙って他人の運を吸い取る輩がいるらしい。
そんな理由から、お参りは余程の事がなければしない方がいいものなのだそうだ。
でもそんな話なんて聞いたことはなく、突っ込みどころも満載だったが、どうせ田舎の迷信だろうと、「ああ、そう、これから気をつけるよ」と適当に返事をした。
その帰り際、急に父が倒れた。
すぐ救急車に乗せて病院へ連れて行くと、「末期の肝臓癌で長くても後3ヶ月程度」と診断された。
件のお参りと父への突然の余命宣告は関係あるのだろうか?
(終)