神社を参拝した時の不思議な体験談
これは、とある神社で不思議な体験をした話。
去年の正月過ぎ、誘われて神社に行った。
きっかけは、ギャンブル好きの友人が仮想通貨で儲けたいということで、御利益があると言われる神社を見つけたので一緒に来てくれ、と。
そこは車で一時間、他府県の神社だった。
仕事の都合で、神社に着いたのは夜7時頃。
友人は「神様に時間は関係ない」と言っていたが・・・。
着いてみると、屋台がポツポツ4つくらいあり、イカ焼きやポテトが売られていた。
焚き火があり、石燈籠にも明かりが灯っていて、人もまばらではあるがそれなりにいる。
正月から10日くらい経っているのに人がいるんだなと思っていると、一人の初老の男性が目に留まった。
皿に猫の餌を入れているところだった。
初老の男性はどこの地域にも一人はいる猫おじさんのようで、毎日神社の猫に餌をあげているらしい。
友人は、「こんばんは、正月から10日くらい経つのに人が結構いるんですね」と話しかけた。
それに対して男性は、「今の時期はまだまだ人が来るけれど、普段は毎月の月祭り以外は寂しいものだよ」と答えた。
男性は僕らを気に入ってくれて、色々な話を聞かせてくれた。
親の大病を神社の神様が治してくれた話。
稲荷社の狐が夢に出てきた話。
神の使いが狐で、猫とは仲が良く、お互いに犬のこと嫌っており、犬の臭いがする人間には御利益がないという話。
そして、神様に大きな借りがあるため、毎日神社の掃除と猫の世話をかかさず20年以上しているという話。
どの話もただの思い込みのような感じだったが、猫に毎日餌をやっていることは間違いなさそうだった。
別れ際、お気に入りの写真を見せてくれた。
それは稲荷社の狛狐の足の間から顔を出す猫の写真で、男性はとても愛おしそうに見つめていた。
神社から帰って何ヵ月か経った頃、急にあの神社のことが気になって友人に聞いてみた。
すると、場所をGoogleマップで送ってきてくれたので、今度は一人で行ってみることにした。
休みの日に行ったので、今回は昼間に到着した。
前回は夜だったが、明るさとは関係なく、景色が全く違って見えた。
石燈籠も稲荷社も何もなく、焚き火をしていた広場もない。
小さな社がぽつんとあるだけだった。
間違ったか?と思ったが、車を止めた場所は同じだし、駐車場所から間違うような道ではない。
不思議に思いながらもお参りをして、車に戻る途中の自販機でジュースを買っていると、一台の軽トラックが近づいて来た。
挨拶がてら、神社のことを訊ねてみた。
すると、こんな答えが返ってきた。
正月には集落の人はお詣りに来るが、それ以外の人は滅多に来ないということ。
月祭りのことを聞いても、年に一度秋にお祭りをやっていたが、今はやっていないということ。
まさか!?と思い、初老の男性のことを聞いてみたが、野良猫はたくさんいるけどそんな人は知らない、猫の世話をするような人がいたら俺たちが知らないはずがないとのこと。
近づいて来たのは、他府県ナンバーの見知らぬ車が停まっているので様子を見に来たらしかった。
前回来た時とあまりにも様子が違うので、軽トラックの男性に話を聞いてもらった。
すると男性は笑いながら、「狐に化かされたな。そんな時はタバコを吸え。狐が嫌がって離れていくから」と言う。
また、「神社の屋台で何も食べなくて良かったな」とも言っていた。
男性のお爺さんくらいの時代には、狐に化かされることはあまり珍しいことではなかったという。
最近でもたまに化かされて、石や毒キノコを食べさせられたりするらしい。
怖くはなかったが、不思議な体験をした気分だった。
(終)
だが待って欲しい、その軽トラの男性が実在の存在だったと言える根拠もまた無い訳で、その男性こそが実は狸の化けた、或いは狸派の手の者という可能性も以下略