幽霊列車と呼ばれていた列車があった
これは『幽霊列車』と呼ばれていた、とある列車の怪談話。
数年前のこと、俺の故郷で肝試し中の軽率そうな若者が、トンネルの中で最終列車に轢かれて死亡する事故があった。
なんでも、『終電の後に1本、男達を満載にした列車が走る。乗っているのは昔に事故で亡くなった人達だ』という、幽霊列車の怪談を聞いて隣県から遠征に来ていたところ、列車に撥ねられ轢かれた。
幽霊列車の正体
その昔、本当に通称『幽霊列車』と呼ばれていた列車が走っていた時期があった。
それは時刻表にも載らない臨時列車で、乗っているのは男のみ。
空襲を警戒して、駅校舎を除いて車内も消灯していた。
駅員には臨時列車の運行が教えられるが、箝口令が敷かれていた。
沿線住民も見て見ぬふりをしていて、幽霊列車のことは口外してはいけなかった。
もし口外すると、憲兵に連れて行かれたという。
実はこの幽霊列車の正体は、兵士を運ぶ臨時軍用列車。
明治頃の路線では大きな落盤事故があったが、それとは違う場所。
鉄橋を作る技術が上がり、線路を付け替えたから。
しかし故郷にある怪談は、二つが一つになっていた。
地元でその怪談が知られていなかったのは、地元の年寄り達は幽霊列車の正体を知っていたからだ。
誰かが話を聞いてきても、「そりゃあ、兵隊さんを運んでいた臨時列車のことだ」と言われれば広めようがない。
ちなみに地元では聞かないが、今では『肝試しに行って列車に轢かれて死んだ若者が、自分の首を泣きながら探して彷徨っている』という怪談があるそうだ。
ただ、冒頭の若者の死亡事故では首は飛んでいないので、これは全くのデマかと思われる。
(終)