ありえないメール受信と着信 2/2

彼女の彼氏、

つまり俺の友人は重い口を開いた。

 

「あいつ、慢性的に

この世に恨みをもってたよ。

 

それでいて、時々猛烈に

この世界に愛着を感じていた。

 

多分、心を病んでたと思う。

俺がどうかしてやれるかなと思ったけど、

駄目だったらしい」

 

以下、奴の話。

 

バイトで知り合った二人が

付き合い始めてしばらくして、

彼女はよく友人に話していた事があった。

 

彼女は時々、

まとまりがなくなるというのだ。

 

普通の人のように形状を維持出来ない。

分散してしまう。

 

友人は彼女の分裂症を疑ったが、

放っておけず色々話を聞いてやったらしい。

 

まとまりが無くなった彼女は、

色んな物に部分的に入り込んだり、

色んな物が見えたりするとの事。

 

飼ってる猫、掃除機、水の入ったコップ、

石、そして携帯。

 

彼女が眠りながら無意識か有意識か、

携帯を操ったのはどうもここら辺らしい。

 

携帯電話に彼女の一部が入り込んだのか、

はたまた彼女が携帯になってしまったのか。

 

まだその時は、

手の込んだ悪戯だと思い込もうとした。

 

やろうと思えば出来ない悪戯じゃない。

 

非通知着信拒否してた奴は、

設定ミスか、思い違いでもしてたんだろうと。

 

死んだ人を冒涜してる奴がいるかも、

と思うと腹も立った。

 

友人は実際、憔悴しきっていたし。

 

気まずい気分になり、

帰るかという話になった。

 

今日の葬式の携帯については忘れようと。 

その時、また携帯が鳴り出した。

 

メールの着信。

差出人は非通知。

全員一斉に。

 

『ねえ、みんな面白かった?』

 

冗談にしてはひどすぎると

俺が言いかけたその時、

女の子の一人が泣き出した。

 

電源を切ったのに着信したらしい。

 

半狂乱の仲間たちをなだめて、

帰宅したのは夜遅くなってから。

 

疲れていたものの眠れるはずもなく、

酒を飲んで気を紛らわせていた。

 

数日後、一通のメールを受信した。

 

非通知。

 

非通知着信拒否設定にしていたのに。

 

以下全文。

 

『○○君(俺)、△△(彼女)です。

急な事でびっくりしたと思います。

 

年々私は生きてる感じがしなくなったので、

もう死んでしまうんだろうな、

ってわかってたよ。

 

生きていても楽しくなかったし、

意地悪な人ばかりで正直煩わしかったし。

 

嫌いな人を呪い殺してやりたいよね。

私にはそれが出来るし。

 

でも、そうしようとしたら◇◇君(彼氏)や、

話を聞いてくれたり慰めてくれた○○君(俺)

他の人達の顔が浮かんでくるの。

 

この世に未練なんか残すんじゃなかったよ。

どっちつかずで今も彷徨ってる。

 

電波に乗ればどこにでも行けるんだよ。

すごく便利。

 

意地悪な人のとこに行って、

色々してやりたい。

 

でも、○○君(俺)は賛成しないかな。

 

困ったことに、

どんどんまとまりが無くなってきてる。

 

そのうち自分がわからなくなるかもしんない。

 

その前に仕返ししたいなあ。

引っ張るだけでいいんだよ。

じゃあ、またね。』

 

メールを受け取る前日、

俺は携帯のアドレスを変更していた。

 

悪戯は、もう懲り懲りしていたので。

 

明日になったら必要最低限の人に、

新しいメアドを知らせるつもりでいた。

 

誰も知らない俺のメアドに、

彼女からのメール。

 

偶然というより、

『私、こんな事出来ちゃうんだよね』

というメッセージに思えた。

 

やっぱり彼女は病んでたと思う。

それを自分で持て余してたようだった。

 

病んだ心で彼女が誰か引っ張らないか、

間違えて俺や彼氏の友人を引っ張ったりしないか、

ずっとビクビク怯えていたが、

 

今でも生きてるところをみると、

彼女は分散してしまったに違いない。

 

彼女にとっては幸せじゃないかな?

あれから誰も死んでいないし。

 

そのことを思うと泣けてくる。

もっと優しく接してやれたのに・・・って。

 

そしたら、恨みなんてきれいさっぱり

消えたかもしれない。

 

それから一年くらいして、

『着信アリ(映画)』を観た。

 

あんな風にならなくてよかったと思った。

 

(終)

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