土砂降りの雨の中のバス停にて
これは、とあるバス停で体験した不思議な話。
峠道でいきなり土砂降りの雨に出くわし、近くのバス停に逃げ込んだ。
屋根はかなり狭かったが、なんとかそれ以上に濡れるのは避けられた。
ふと気づくと、すぐ隣には先客の若い女性がいる。
彼女は身体を拭いながら、私に話しかけてきた。
彼女が少し話した後、私も彼女に話かけた。
「こんな大雨は本当に鬱陶しいですね」
すると、次のような応えが返ってきた。
「雨は好き。独りきりじゃなくなることが多いから」
そこまで聞き取ると、横の存在感がフッと消えた。
ざあざあ降りの雨の中、私は一人バス停で立ち尽くしていた。
それに、彼女の顔も服装も、まったく思い出せない。
雨が止むまで、本当に落ち着かなかった。
でも、逃げ出すのも悪い気がして・・・。
(終)
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