大晦日の夜に見てしまった恐ろしいモノ

住宅街

 

あれは、1999年の大晦日でした。

 

深夜、タバコを買いに行こうと、少し離れた場所にあるコンビニに出向きました。

 

私の住んでいる所は結構な田舎なのですが、昔は街道筋だったこともあり、狭い道路を挟んで、それこそ江戸時代を思わすような古めかしい木造建築の家がずらりと並んでいます。

 

普段ならこの時間は人通りがまったくありませんが、近所の寺や神社へ参拝に行く人々でしょうか、数人とすれ違いました。

 

コンビニでタバコと缶コーヒーを買い、除夜の鐘を聞きながら、来た道を家に向かってゆっくりと帰りました。

 

そして、街道筋に入った時でした。

 

街灯もなく薄暗い中、何か白い物がひらひらと揺れているのが視界に入ってきたのです。

 

その時は「ああ、洗濯物でも揺れているんだろう」と思い、気にせず通り過ぎようとしました。

 

ですが、だんだんと近づくにつれ、それが何かわかりました。

 

『真っ白い着物を着た女性』でした。

 

手足を広げ、まるでヤモリのように、その家の2階の壁にベッタリと貼り付いていたのです。

 

まるで、その家の中を覗うかのように。

 

この時点ですでに、その女性が生きている人ではないことはわかりました。

 

垂直な壁にベッタリと貼り付くようなことは、生身の人間では到底無理でしょうから。

 

今から思うと、なぜあの時にあんな行動に出たのかわかりませんが、私は相手に気づいたことを悟られてはいけないと思い、そのまま通り過ぎることにしたのです。

 

Uターンをして別の道から帰る、という手段もあったにもかかわらず・・・。

 

冷静なつもりでしたが、かなりテンパっていたのでしょう。

 

極力そちらの方を見ないようにしていたのですが、やはり気になります。

 

チラチラと盗み見をしながら、そこを通り過ぎました。

 

若い女性のようでしたが、確信はありません。

 

顔は見えなかったのですが、もし見ていたら、おそらく気絶するか絶叫して助けを求めたかもしれません。

 

その女性が着ていたものは、葬式の時に亡くなった方に着せる白装束のようでした。

 

私は角を曲がり、相手から自分の姿が見えないとわかった瞬間、恐怖心が湧いてきました。

 

走って家に帰り、急いで部屋に鍵を掛け、すぐさま布団に潜り込みました。

 

あの日に近辺で葬式があったわけでもなく、また特に変な噂もなく、件の家もいたって普通のご夫婦が住んでいらっしゃいます。

 

なので、あの女性が何者なのか今となってはわかりませんが、ひとつだけ気になることがありました。

 

女性の真下を通った時に、微かでしたが声が聞こえました。

 

「お前で終わりだ・・・お前で終わりだ・・・」

 

ちなみに、その家には子供はいないそうです。

 

(終)

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