連絡がつかないから部屋の鍵を貸してくれ
不動産管理会社に勤めている知人の体験話を2つ。
1つ目は、ある日に「子供と連絡がつかないからアパートの鍵を貸してくれ」と言う人が来たそうだ。
身分証を見せてもらうと確かに入居者の保証人だったので、貸し出しは出来ないけれど担当が同行して不在かどうか確認した上で保証人責任で開けましょう、ということになった。
そうして現地に行き、「ヤバイかも…」と思ったのは新聞受けを見た時だった。
ぎゅうぎゅうに郵便物が詰まっていて、明らかに何日もほったらかし。
部屋の呼び鈴を鳴らしても反応がなく、部屋の中に人の気配もない。
念のために裏側へ回って窓側から室内を見てみましょうとなったが、「これは申し訳ありませんが自分は同行できません。警察をすぐ呼びますから警察立会いで開けましょう」ということに。
なぜなら、窓を見るとカーテンは閉まっていたが、そのカーテンの隙間が真っ黒だったからだ。
何かがざわざわ動いていた。
それは、“大量のハエ”だった。
ここからは2つ目の話。
ある日、「空室のはずなのに人が出入りしている感じがする」というクレームが入った。
現地に行って各種メーターを見てみたところ、確かに管理会社で把握している数値より大きくメーターが動いている。
「出て来い!」
怒鳴りながら部屋に入ったが、姿が見えない。
扉を片っ端に開けていくが、何も居ない。
今は居ないのか?それなら後で警察を呼ぶか…と思った瞬間、微かに「カタッ」と音がした。
和室にダッシュし、押入れを勢いよく開けると、中におっさんが体育座りで居た。
予想はしていたが、お化けのような体育座りにびっくりして、思わず悲鳴を上げてしまった。
すると、おっさんも悲鳴にびっくりして悲鳴を上げた。
お互い悲鳴を上げた後、「あんた、お金を払わず住んでちゃダメなのわかってるよね?」と叱ると、おっさんは大人しく従った。
通報して住居侵入で警察にしょっ引いてもらったが、後で警察からはこう言われたそうだ。
「あの男、刃物を所持していましたよ。一人で確認は危険なので、次からは警察を先に呼んでください」と。
また、悲鳴を上げたのが良かったのでしょう、とのことだった。
(終)