見つけて手に持ったら死ぬんかもしれん
これは、石じじいから聞いた話です。
曰く、『見つけると死ぬ石』があったそうです。
どういう石なのか?
山林作業などで山に入った大人や、遊びに行った子供が死んでいる。
その死体は例外なく、”赤茶色の珪石”を握っているのだそうです。※珪石(けいせき)=水晶のようなもの
あるいは近くにそれが落ちている。
当然、現場検証が行われるので、その石もほとんどの場合が警察によって発見され、回収されます。
ある刑事がその共通点に気がつき、警察にも知己の多かったじじいに尋ねたそうです。
じじいは、「石は上記の通り赤茶色の珪石であり、その辺り一帯ではまず見つからない石だ」ということを教えました。
石は4個ほど警察に保管されていたそうですが、どれも同じような石でピンポン球ほどの大きさだったと。
「その石を拾った警察の人は大丈夫やったん?」と聞く私に、じじいはこう言いました。
「そうよ、そのことよ。警察の人や死体を見つけた人らは皆、死ななんだ。あれは、最初に山で見つけて手に持ったら死ぬんかもしれん、ちゅうことやったね」
いづれも事件性は認められず、そのような珪石に関わる死亡事案はいつのまにか起こらなくなりました。
死亡と石の因果は偶然だったのかもしれませんが、偶然がそれほど重なるものでしょうか。
「なあ、気いつけんさいよ。その赤い石はな、なにも山にだけあるとは限りゃせんので。学校へ行く道端に落ちとるかもしれんし、泳ぎに行った浜に落ちとるかもしれんぞ」
私は「脅かすなよ、じじい!」と怯えたものです。
でも今になって考えてみると、その石は死んだ人たちだけが予め持っていて、その石の効力で皆が死んだ、とも考えられるのではないでしょうか。
その人たちが、その石を入手した時期が同じくらいであれば、それによって死ぬ時期も似通ったものになるのではないでしょうか。
しかしそうなると、彼らは同時期に石をどうやって入手したのか?また、どうして同じような時間経過で死ぬのか?が、まったくわかりませんが…。
(終)