何をやってもダメになった土地の因縁話
これは、うちの近所の忌み地にまつわる話。
この間まで空き地だった場所に、何かの営業所が建った。
去年94歳で死んだ爺さんが言っていたが、ここは『良くない土地』らしい。
曰く、爺さんがまだ20代の頃、そこには普通の農家があったそうだが、何かの事情で借金をしてしまい、それが払えなくなって困窮したそうだ。
そこに目を付けた、ここら辺の地主オヤジ(悪徳不動産業者)が二束三文で買取り、住人を叩き出して我が物にしてしまった。
この地主オヤジは鬼のように血も涙もなく、あっという間に住んでいた家族を追い出した。
次に住む家が見つかるまで少し待っててくれと懇願されても、有無も言わさず家を叩き壊した。
そして潰した家の上にそのまま土を被せて埋めてしまい、たった1日で更地にしてしまった。
なので、鍋釜や家財道具、先人の位牌など、一切合切があの下に今も埋まっている。
その後、追い出された住人の家長は近所の木で首を吊り、他の家族の者は行き先不明になった。
今となっては知っている人は僅かしかいないが、あそこは人を泣かせてブン取った土地なのだ。
そんなことはお構いなしに、不動産屋は強気の高値で売りに出していた。
地元民はもちろん誰も手を出さなかったが、因縁を知らないよそ者が何度か借りたようだ。
「でもなぁ、何やってもダメになった。だからもう何十年も放ってあるんだ。因業地主め、儲け損ねて困っているべ」とのことだった。
そんな因業地主も死に、代替わりをして数年が経つ。
ただ、その地主家庭にも妙な因縁話がある。
件の土地は道路沿いにあって広く、また日当たりも良いから売れたのだろう。
この先どうなるか、見守るとしよう。
(終)