驚くような場所でよく出会う知人がいる
よく出会う知り合いがいる。
数年おき、数ヶ月おきに、「こんな所で!?」と驚くような場所で出会う知り合いがいる。
共通の友人を介しての知り合いであって、直接的にそんな知った仲ではない。
俺は向こうの名前と仕事程度しか知らないし、向こうは俺の名前すら憶えているかどうかという程度の関係だが、やたらと妙な所で出会う。
例えば、納沙布岬。
あれが北方領土かぁと夕日を見ながら海に向かって立っていると、名物の灯台を挟んで海を見ていたのが彼だった。
例えば、四国高松のしなびた温泉。
先に湯を上がって連れを待っていたら、女性を連れて混浴露天風呂に向かう彼とすれ違った。
例えば、羽田の国際便ターミナル。
ゲートで搭乗を待っていたら、10分先の発の便に乗り込む彼に遭遇した。
それほど仲は良くないものだから、すれ違っても「ああ、ご無沙汰です。旅行ですか?」、「またですね。本当よく会いますね」みたいな、よそよそしい挨拶程度しか交わさないが、お互い何でまたこいつにここで会うんだ…となっていると思う。
少なくとも俺はなっている。
確率的にほぼあり得ないことだし、お互いがお互いを付け狙う対象でもないので、おそらく『縁がある』というのはこういうことなんだろう。
そんな話を会社の飲み会でしていたら、「違うパターンですけど、以前うちの会社に勤めてたアヤちゃん。あの子、凄いですよ」と言われた。※仮名
2年くらいしか在籍していなかったが、同僚らと色んな所でばったり会ったらしい。
ハワイで会った、湘南のパンケーキ屋で会った、銀座シックスのオープニングパーティーで会った、などと話が相次いだ。
言われてみれば、俺もアヤちゃんと福岡春吉の屋台街で同じ屋台に座り、写メを撮って会社のLINEグループに出したこともある。
人の引きというか縁というか、前世からの因縁というか、切っても切れない繋がりみたいなものがこの世界には絶対にあると思っている。
(終)