バスで知り合った男子高校生との不思議な縁
私自身には霊体験のようなものは何もありませんが、これはその類のモノを少し感じる友人の不思議な体験談。
それは音大出の友人の綾香(仮名)が、大学卒業したばかりの頃のこと。
よく乗っていた京都の路線バスで、いつも後部座席にカバンを横に置いて座っている、マナーが悪く不良っぽい高校生の男の子がいたそうです。
はっきりとものを言う性格の綾香は、ある日その彼に「カバン、どけなさいよ。どければ一人座れるでしょ」と注意をしました。※どける=よける
女性から注意されたことに面食らったその彼は、それがきっかけで彼女に少し惹かれたようです。
それ以来、綾香が乗ってくるまで今まで通りにカバンで席をふさぎ、彼女のために席を取っておいてくれるようになりました。
それからは毎日、目的地までお互いのことを喋る仲になり、彼が3人兄弟の長男で、弟たちの方が勉強が好きだし出来るから、自分は働いて弟たちを大学に行かせるつもりだということも話したそうです。
彼は高校卒業後、北関東の某市のスポーツセンターで水泳のコーチとして働くことと、彼には彼女がいて、その彼女も一緒に連れて行くということまで教えてもらいました。
まもなく綾香は婚約者と結婚し、彼は他県へ就職。
それでも連絡は電話で取り合っていたそうです。
ところが突然、彼からの連絡がぱたりと途絶えました。
気にはしていましたが、忙しいのかな?と思って特に気にも留めず、ある日に旦那さんが選んだオートキャンプ場へキャンプに行ったそうです。
実はその地は、彼が就職したスポーツセンターがある北関東の某市でした。
その日、キャンプ場は自分たち夫婦の他に、もう1組の家族がキャンプをしていました。
そんな雰囲気から自然と会話をする状態になるので、「××スポーツセンターに知り合いが水泳のコーチで働いているんですよ」という話になりました。
その時、そのもう1組の家族がそこのメンバーだと言い、しかも彼の名前を出したところ、そこでコーチとして働いている彼のことも知っていました。
しかし彼は、数日前に交通事故で亡くなったと聞かされました。
あまりに偶然の巡り合わせで彼の死を知った綾香は、彼の実家の住所を聞いていたので、キャンプの後、お焼香のために伺ったそうです。
そして彼の母親に、こんな不思議な経緯で息子さんの死を知ったと話しました。
自宅に戻って数日すると、彼の母親から手紙が届きました。
『あなたがいらした日にこんなものが仏壇の中に置いてありました。私の物ではないのでお忘れになったものと思い、送らせて頂きます』
そう書いてありました。
手紙に同封されていた物は『紅筆』。※紅筆=口紅をつけるのに用いる筆
彼女曰く、「確かに私の物なんだけれど、絶対に持って行ってないのよね…」とのこと。
綾香の旦那さんは知っているかどうか知りませんが、実は彼女、結婚前にその彼とキスくらいはしたそうです。
偶然なのかもしれませんが、何かメッセージめいたものを感じなくもありません。
特に”紅筆”というところが。
あぶらとり紙ではね…。
(終)