絶対に渡ってはいけない踏切
自分が通っていた小学校には、
渡ってはいけない踏切というのがあった。
校則で、そう決められているのか
どうかは知らないが、
横断してるのを教師に見つかったら、
怒られていた。
校庭のすぐ向かいにあって、
遮断機も無く、
車も通れないような狭い踏切である。
自分には年の離れた兄がいて、
その兄が言うには、
ずっと前からその決まりは
あったそうです。
ある日の午後の授業で
風景画を描くために、
自分と友達の二人で、
何を描こうか校庭を歩き回っていた時。
校庭の向かい側にある
例の渡ってはいけない踏切が、
カンカン鳴り出した。
何の気なしに見てみると、
少し向こうの方から中学生か
高校生ぐらいの人が乗った自転車が、
かなりの猛スピードで
踏切の方に突っ込んでくる。
電車が来る前に急いで渡ろうと
しているのかな?と思っていると、
やはり踏切の方に
ハンドルを切ってきた。
線路の向こう側とこっち側では
段差になっていて、
踏切の前は2メートル程と
短いものの、
かなり急な上り坂になっている。
車止めなどもあり、
スピードの出ている自転車で
すり抜けるのは、
それなりの技術がいる。
案の定、
自転車は上り坂を登ったところで
失速してしまった。
ちょっとやばいんじゃないの?
と思っていると、
自転車は踏切の真中で、
完全に止まってしまった。
足で地面を漕いでいるが、
上手く進んでいない。
それから数秒だろうか、
すごく長い時間に感じた。
けたたましいブレーキ音と共に、
最悪の結末を迎えてしまうことになった。
あまりの出来事に自分と友達は、
目を背けることすら出来なかった。
はねられた学生は、
線路の反対側に飛ばされていた。
こちらからは見えなかったけど、
ぶつかった時の映像が
目に焼きついていた。
少し離れたところにいた
生徒達が集まって来て、
騒ぎを聞きつけた先生も
やって来た。
先生は、何があったの?と、
しきりに聞いてきたが、
あまりの出来事に
上手く説明出来なかった。
友達の方を見たら、
目を見開いたまま、
焦点の定まらない目で泣いていた。
先生に言われて、保健室で
しばらく休んで落ち着いた頃に、
また先生がやって来て、
状況を説明してくれと言われた。
自分は、見たままに
話したんだけれど、
隣にいた友達が「違う!」と、
言い張って聞かなかった。
友達が言うには、
学生は二人で、
自転車で二人乗りをしていた。
後ろに乗っている方が
早く早くと、
運転している方を
急かしている感じがした。
踏切の真中に来た時に、
後ろに乗っていた方が
自転車を掴んで止めて鍵を掛けた、
そう言って譲らなかった。
自分は後ろに乗ってた学生なんて
絶対に見ていないし、
電車にはねられた学生は、
一人だけだった。
でも、友達の言っていたことは
嘘じゃないような気がする・・・。
(終)