放課後に心霊写真を撮る遊びが流行った時 2/2

 

うちの学校での一輪車は3種類あり、

 

大中小を各学年ごとに色分けして

使用している。

 

緑が1年~3年、黄色が3年~4年、

赤が5年~6年となっている。

 

小さい緑の一輪車なので、

低学年坊主のイタズラかと思われたが、

 

自分の学年(5年)のトイレの

個室に放り込まれていた、

 

悪質なイタズラである。

 

高学年の方に疑いがかかるのは

当然であったが、

 

誰も心当たりはない。

 

ただ、俺と弟だけは、

 

昨日の放課後、

5年の男子トイレに誰かがいたのではないか、

 

という漠然とした疑いは抱いていた。

 

この事件はちょっとした問題となり、

後日、全校生徒の間でも、

 

遊具の管理や整理整頓を

きちんと行なうように指導された。

 

それからというもの、

 

遊具を遊んだ後に放置する生徒は

いなくなったが、

 

結局犯人は分からず終い。

 

また、

 

クラスにかけられた疑いが晴れぬまま、

5年生徒の誰かだろうという結論には、

 

俺や他のクラスメイトも

釈然としないものがあった。

 

そこで俺は、

 

真犯人を幽霊と勝手に結論づけて、

再び放課後の心霊写真遊びを始めた。

 

当然、

怪しいのは5年の男子トイレ。

 

弟はもうあの出来事以来、

 

ビビってこの遊びには付き合わなく

なってしまったので、

 

俺一人で日の暮れかけた、

放課後の校舎を徘徊する。

 

今考えてみるとゾッとするが・・・。

 

使い捨てカメラでトイレの隅々を撮影し、

 

心霊写真よ出ろ!と、

訳の分からぬ念を込めながら、

 

鏡に自分の姿を映して撮ってみたり、

黄ばんだ便器を撮ってみたり、

 

床を撮ってみたり、

掃除用具の暗がりの中を撮ってみたり、

 

もちろん問題の個室の方も

入念に撮影した。

 

後日、

学校から帰って来ると、

 

親に頼んでいた写真の現像が

出来上がったことを知り、

 

ランドセルを玄関に叩きつけて

自分の部屋に飛び込んだ。

 

40数枚撮影した写真を一枚一枚、

ワクワクしながら凝視する。

 

怪しいものが少しでも写っていたら、

 

あの放課後の出来事は

幽霊の仕業だったのだ、

 

と自分で納得出来るからだった。

 

・・・しかし、

現実とは味気ないもので、

 

撮影した全ての写真には、

心霊らしきものは何も写っていなかった。

 

ピントもロクに合わず、

 

滅茶苦茶なアングルからの

トイレ一色の写真だ。

 

俺はひどくショックを受けて、

 

もう今後は心霊写真などという、

馬鹿げた遊びはやめようと思った。

 

ところが、

 

机の上に散らかした写真を

封筒に戻そうとしていた時、

 

ある事実に気がついた。

 

何のことはない。

 

現像された写真よりも、

 

ネガフィルムに写っている枚数の方が

2~3枚多いのだ。

 

その足りない分のネガを

窓に当てて見てみると、

 

ネガではよく分からなかったが、

トイレの個室を写したものであった。

 

そこで俺は、

 

写真の枚数が足りないことを

母親に尋ねてみると、

 

母親は奥歯に物がつっかえた

ような言い方で、

 

「ああ、残りのはね、捨てた」

 

俺はこの母親の一言に、

心底腹を立てたのを覚えている。

 

俺が撮影したのに、

 

勝手に捨てられたのでは

たまったものではない。

 

母親の意図も理解せず、

俺は一人でプンプン怒りながら、

 

居間のゴミ箱の中身をムカっ腹立てて

ひっくり返しぶちまけ、

 

捨てられた写真を探した。

 

そして、

 

あの瞬間だけは今でも脳裏に

こびり付いている。

 

2~3枚だったと思うが、

 

ゴミに混ざって執拗に捻じ曲げられた

写真を発見した。

 

母親のやり方が頭にきた俺は、

写真の一枚を無理矢理に広げる。

 

そこに写っていたものは、

 

個室の天井の通気口を覆っている

網からこちらを覗く、

 

首を捻った長髪の女だった。

 

ずっと後になり母親に訊いて

分かったことだが、

 

うちの小学校では昔、

 

事故で両脚が不自由になった

女子生徒がおり、

 

中学に入学する前日、

自殺して亡くなったという。

 

理由は不明だが、

体育が大好きな生徒さんだったそうで、

 

学校から家に帰ると、

 

近所でいつも緑色の一輪車を

乗り回していたらしい。

 

その話を訊いた時、

 

彼女は両脚の無くなった身体で、

今も一輪車に乗ろうとしているのではないかと、

 

恐ろしさと悲しさの混じる

複雑な気持になったのを覚えている。

 

・・・以上が俺の小学生の頃の思い出だが、

実はこの話には続きがある。

 

俺が小6になった6月頃の事

だったと思うが、

 

同じクラスの生徒で放課後、

 

バケツで育てていた稲に

水を注していた奴が、

 

奇声を上げながら廊下を四つん這いで

走る女を見たのだという。

 

その話を聞いた女子が

キャーキャー怖がり、

 

男子はみんなそいつを馬鹿にして

からかっていたが、

 

俺が学校を卒業する頃には

クラスの連中がその女の幽霊を、

 

『ツンバイさん』

 

と呼ぶようになった。

 

四つん這いだから、

ツンバイさん。

 

でも俺は知っている。

 

彼女にはとっくに両脚なんか無いことを。

 

なんでも、

稲に水を注していたその生徒の話では、

 

四つん這いで走っていた女の両脚は、

足ではなく『両手』だったそうだ。

 

(終)

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