派出所で起きた謎
俺は、K県Z市という所に
住んでいる。
隣がM市なんだが、
今から20年以上前の話だ。
M市の国道沿いに、
派出所があった。
中学生だった俺は、
結構やんちゃだったので、
M市に行っては色々と
ゴタゴタを起こしていた。
ある日、ゲーセンで
5人ばかしと乱闘騒ぎになり、
ツレと俺は補導されてしまった。
その派出所に、
若い警官がいたんだ。
一緒に捕まったツレと俺を、
後に気にしていてくれて。
たまに顔を見に来ては、
海外のハードロックとか、
バイクの話やらの雑談をする。
中学のDQNと若い警官の
交流だった。
秋も深まったとある夜、
ツレから電話があった。
なにやら慌てている。
「お、おい!○○さん、
し、死んじゃったぞ!」
電話の向こうで、
ドモリながら怒鳴るツレ。
実はツレの家は、
その派出所のすぐ近所にあり、
20歩くらい歩くと、
派出所が見える位置にあった。
「マジ?
どないしたんや?
事故か?
まぁ待っとれ。
今からオマエん家に行くわ!」
俺はRZ50に乗って、
ツレの家に向かった。
ツレの家に着く前に、
派出所が見えた。
赤灯が回ってる・・・。
「・・・?何や・・・?」
疑問が湧いたが、
とりあえずツレの家に直行した。
玄関先でツレは待っていた。
真っ青な顔をして。
「どういう事や?○○さん、
この間も会ったばかりやないか?」
「お、俺にも分からん!
あのなぁ、○○さん、
自分で頭ぶち抜いたんや!」
「はぁ~?この間、
初めての子供が出来たって、
○○さん言うてたやん!
マジかよ?」
「マジや!
俺、昼にたまたま○○さんに会って
話したばっかりやのに・・・」
「変わった事、無かったんか?」
「無い!
いつもみたいに単車の話して、
これから警らに行くって言いよった」
その後、
二人で派出所に行ってみた。
まだ鑑識の奴等が
出入りしていた。
1人を捕まえて、
「○○さん、どないしたんですか?」
と、聞いてみた。
「うるさい!あっち行っとれ!
お前らには関係ないこっちゃ!」
と相手にもされず、
俺達は追い返された。
次の日、
俺は、オヤジの親友である、
M市の警察官●●さんに電話を掛けた。
小さい時から俺を知っているし、
色々な犯罪捜査の話も
してくれていたから、
きっと何か話してくれるはず。
そう思って、
オヤジに連絡を取ってもらった。
まず、○○さんは遺書さえも残さず、
突然自分の頭を撃ち抜いたらしい事。
派出所には二人勤務していて、
もう一人が20分ほど留守にした
間の出来事って事。
その夜、同僚と夜釣りに行く
約束をしたばっかりだったって事。
そして、●●さんの話で
一番恐ろしかったのが、
その派出所で同じような事例が、
二人目だった。
しかも、
10年後のまったく同じ日に、
同じ場所だったって事・・・。
実は●●さんは10年ほど前に、
その派出所に勤務していた。
その日、●●さんも
そこに居た。
そして、●●さんが20分ほど
席を外した間に、
一緒に勤務していた後輩が
頭を撃ち抜いた。
当然、遺書など書いてはいない。
その人も悩み等は無く、
見合いで知り合った彼女と
結婚間近の幸せな時だったらしい。
●●さんが所用から帰って来た時には、
完全に事切れていたって話だった。
その事件があってから
しばらくして、
その派出所は撤去され、
長い間、空き地になっていた。
今では某地方銀行の
ATMの駐車場になり、
当時の面影は
まったく無くなっている。
(終)