あの世からのSOS
現在、私の実家は、
改築工事の為に解体されている。
それは、今は亡き
祖父母の家で、
今までにも何度も
増改築を繰り返して来たが、
土台の痛みが酷い。
去年、
祖母が他界した事もあって、
ついに全面的な改修に
踏み切ったのである。
話は解体工事の当日に遡る。
母は、大工に飲み物を
差し入れたりしつつ、
工事を眺めていた。
ある時、サイレンを鳴らしながら、
一台のパトカーが表通りを走って来た。
続いて、
救急車と消防車のサイレンも
聞こえ始める。
「何か事故でも起こったのだろうか?」
野次馬根性丸出しで、
表通りに出た母。
だが、何とそのサイレンは、
全て母の前で止まったのである。
ドヤドヤと駆け降りて来た彼等は、
母に尋ねた。
「Yさんのお宅はどちらですか?」
それは、既に13回忌を迎えた
祖父の名前だった。
聞くに、
『老人用の携帯型緊急用
アラームが鳴った為、
急いで駆け付けた』
との事。
しかも、一切の状況が
掴めない為、
警察、救急、消防の全てが
やって来たと言うのだ。
呆気に取られた母だったが、
既に祖父母が他界している事や、
第一、家が無い事を説明し、
帰ってもらったそうだ。
だが、
駆け付けた救急隊員等は、
「絶対にここからの通報で
間違っていないはずだが・・・」
と、最後まで納得していなかったという。
『解体工事中、電話線に
妙なパルスが入り込んでしまい、
偶然に緊急通報として
受け取られたのではないか』
この話を聞いて、
そう言った者もいた。
だが、我々の見解はただ一つ。
「あの世からアラーム鳴らさんでも・・・」
(終)