双子の弟の異常な感情 2/2
次の日の朝、
弟は何も変わらない様子だった。
私は少しほっとした。
(アレは何かの見間違え、
もしくは夢か何かだったのだろう・・・)
いつもと同じように
学校の授業を終え、
帰宅してテレビを見て、
そして入浴。
食事を終えて・・・
弟「おやすみ、お姉ちゃん」
私「うん、おやすみなさい」
灯りを消して、
そのまま眠る。
昨日のはやっぱり何かの
間違いだったんだな・・・。
やがて意識が薄れていき、
完全に睡魔に意識を
奪われる直前、
背中に何か熱いものを感じた。
文章表現の類では無い、
実在する物体の熱さ。
振り向くと弟の寝顔があった。
私に密着したまま眠っていた。
(なーんだ・・・。あれ?
でもコレって・・・)
私の背中に当たっていた何かは、
大きく怒張した弟の性器だった。
悪寒がした。
気持ち悪いと思った。
嫌悪感を抱いた。
昨日の夜の出来事が、
何かの間違いでは無かったことに
気付かされた。
それからは、
毎日の就寝時間が怖くて
仕方が無かった。
弟との普段の生活での
会話も減った。
弟は私に何度も
声を掛けてきたが、
その度に何度も素っ気無い
返事を返して過ごしてきた。
中学も終わりに近づき、
高校受験を迎えることになった。
私は女子校を受験した。
さらに、
母親に私と弟の部屋を
分けて欲しい、
と伝えた。
母親は承諾し、
姉弟別々の部屋になった。
その日の夜、
一人で眠りにつこうとすると、
部屋の扉をノックする
音が聞こえた。
弟「お姉ちゃん、
一緒に寝てもいいかな?」
息を飲んだ・・・。
気力を振り絞って、
私「ごめん。今日は
一人で寝たいんだ・・・」
すると、
扉の向こうから足音が
遠ざかっていくのを聞いた。
その日は本当に久し振りに
安眠することが出来た。
だけど、
そんな日々が続くのも
僅かな時間だった。
次の日も弟は、
私と一緒に寝たいと伝えに
ドアをノックしにやって来た。
その日も私は断ったが、
その次の日も、次の日も、
次の日も、次の日も、次の日も・・・
弟はやって来た。
弟「お姉ちゃん、
なんで無視するの?」
弟「お姉ちゃん、
どうして一緒に寝てくれないの?」
弟「お姉ちゃん、
僕たち姉弟じゃなかったの?」
ドア越しに弟の声を聞く。
耳を塞ぐ。
ある日の朝、
私が目覚めると、
沢山の丸まったティッシュペーパーが
散乱していた。
事態を飲み込めなかったが、
ティッシュペーパーを拾い、
広げてみると、
中には粘着性の液体が
付着していた。
私はそれが何かを
瞬時に理解した。
(弟だ・・・弟がこの部屋に
入って来たんだ・・・。
でもカギは掛けているのに
どうやって・・・?)
次の日の夜、
私は眠りにつくことが
出来なかった。
弟が部屋を自由に
出入り出来ることを考えると、
気が気で無かった。
私「もう嫌だ・・・こんな家、
早く出て行きたい・・・」
口に出して呟くと、
ドアからガチャリと音が鳴り、
開いた。
私「どうして・・・」
弟がにやりと口元を歪めた。
弟「合鍵を作ってもらったんだよ。
お姉ちゃんの事を考えたら
安い投資だよ。
最近のお姉ちゃんは
おかしいよ。
僕たちは姉弟じゃないの?
愛情を与えるのに値しないの?
この地上で、
同じ時間と場所で生まれた
二人じゃないの?
愛し、同じ使命に
従うべきだよ」
私「あんたなんて弟じゃない・・・
気持ち悪い・・・」
弟の口元が
呆けた様に開いた。
何を言っているのか
理解出来ない風の顔をしながら、
こちらに近づいて来る。
恐怖で体が動かない。
そして、私の耳元で
弟が囁いた。
弟「お姉ちゃん、
これからは毎日一緒に
寝ようね。
前みたいに・・・」
そう言って、
布団に潜り込んできた。
布団から抜け出そうとすると、
弟が腕を強引に掴んできた。
弟「ダメだよ・・・
一緒に居てくれなきゃ・・・」
高校生男子の腕力に
敵うはずも無く、
そのまま一夜を明かした。
一晩中、
弟は私の方を向いたまま、
瞬きもせずに丸い目で
こちらを見つめていた。
反対側を向こうとすると、
無理矢理に力ずくで
弟の方に向かせられた。
一晩中ずっと、
弟の顔を見つめさせられた。
異常者の顔にしか
見えなかった。
それから毎日、
弟は私の部屋にやって来る。
高校も1年が過ぎ2年が終わり、
3年目に突入した。
それでも弟は
毎日やって来る。
母や父には
相談出来るはずも無い。
二人は私達のことを、
今でも仲の良いだの
普通の双子だと思っているのだろう。
今日も外は静まり返り、
夜がやって来た。
コン・・コン・・
またドアをノックする音が
聞こえる。
(終)