友人から届いていた怪奇なメール 2/2

姿見鏡

 

<着信>

200X年10月8日 9時23分

 

すまん。

昨日は取り乱していた。

 

ただ、

 

それだけ僕が参っていることを

分かってほしい。

 

狂ってなんかいないんだ。

 

僕は愚か者だよ。

 

こんなことになるなら初期段階のうちに、

 

警察か大学の研究機関でも

訪れるべきだったんだ。

 

けど、もう遅い。

 

このことを知るのは君だけだ。

 

家族に知らせなかったのは、

危険だったからだ。

 

あいつは誰かが自分に気付くのを

待っている。

 

恐怖しない獲物には関心が無いんだ。

 

鏡の向こう5メートルの床に這う、

身動ぎ一つしない人面トカゲ。

 

これに気付いてしまった者だけが、

おそらく不幸な結末を遂げる。

 

もし僕が死んでも、

君は葬式に来るな。

 

これは返信が無いことへの

当てつけじゃない。

 

おそらく君は仕事が忙しくて、

メールをチェックし忘れているだけなのだろう。

 

僕は君の身を案じて言っている。

 

あいつは恐ろしく狡猾だ。

 

知能も見た目以上に高いだろう。

 

この数日、

 

僕が連絡を取り合っていた相手が

君だと気付けば、

 

次は君が狙われる。

 

いかな君とて、

 

鏡の向こう5メートル先を、

確認せずにはいられないだろうからね。

 

奴はもうすでに、

 

僕の首に腕をまわして、

大きな口を開けている。

 

首から・・・

 

奴の爪が当たってる所から

血が滲んでるんだ。

 

もう、鏡を見るのは止めた。

 

悔しいよ・・・

 

こんな奴、触れるのなら

絶対に負けやしないのに。

 

卑怯者め!

 

奴の意図はもう明確だ・・・

 

僕の頭皮を食い千切る気だ。

 

頭蓋骨を噛み砕いて、

 

中の白くてプニプニした脳味噌を

ゆっくりすするんだ。

 

くそくそくそ・・・

 

僕が一体何をしたっていいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

 

(メールはここで途絶えていた)

 - – – – – – – – – –

 

僕がこれらのメールを読んだのは、

出張から帰って来てすぐだった。

 

5回目のメールが届いた深夜のことだ。

 

悪戯にしては少し

質が悪いような気がしたが、

 

彼はもともと散文を書くのを

趣味にしている男だ。

 

これくらいのことは

平気でやるだろうと思ったし、

 

笑って許してやるくらいの間柄でもある。

 

しかし・・・

 

彼の訃報を聞いたのは、

翌日だった。

 

なんとも胸騒ぎがして、

電話を入れたのだ。

 

通夜に出席した。

 

共同斎場だった。

 

わかったのは、

なんらかの事件に巻き込まれたらしい・・・

 

ということ。

 

彼の家では未だに警察官が

出入りしているらしい。

 

自宅に帰っても、

どうにも落ち着かなかった。

 

彼の死を悼んではいるが、

大して気にかけているわけじゃない。

 

基本的に自分は、

薄情な部類の人間だ。

 

僕の心を占めているのは、

 

偶然にもあのメールと事件が

一致し過ぎているということだ。

 

事件は、

 

彼の自宅で起こったらしい、

ということが一つ。

 

そして、

 

散文での彼の死と、

彼の推定死亡時刻がぴったり重なる点だ。

 

メールの着信は正確に時刻が記録される。

 

おそらく彼は、

あれを送信した後で何者かに・・・

 

いや、

本当に送信してからなのだろうか?

 

もしかしたらメールの内容と同じように、

書いている途中で彼が死を迎えたとしたら・・・

 

画面上の送信ボタンを押したのが犯人・・・

 

あるいは・・・

 

馬鹿な!

 

今、自分は何を考えた?

 

そんな生物がいるはずない!

 

全く馬鹿げている。

 

くだらない散文に引きずられて、

 

鳥肌を立ててしまっている

自分が情けない。

 

もう一度、

メールに目を通してみた。

 

何度読んでも寒気が走る。

 

いままで彼はこんな散文を

書いたことがあっただろうか?

 

これがフィクションでなく、

 

まさしく彼のダイイングメッセージ

だとしたら・・・

 

自分は通夜に行ってしまい、

彼の警告を無視してしまった。

 

この狭い部屋なら問題は無い。

 

しかし、

 

居間にある姿見を覗くと、

何が見えるのか?

 

とても試す気にはなれなかった。

 

これから僕は一体、

どうすればいいのだろう・・・

 

(終)

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