部屋のドアに開いた穴 2/3

 

待ち合わせの場所に到着すると、

彼女は体育座りのような格好で座っていた。

 

発作の疲れか少々青白い顔だったが、

愛嬌のある顔だ。

 

割とタイプに近い感じだった。

 

本当に期待はしていなかったし、

話だけのつもりだったが、

 

俺はその晩、

彼女と一線を超えてしまった。

 

翌朝、彼女に俺が通院した

診療所を紹介した。

 

彼女はとりあえず、

 

パニック発作の苦しみからは

開放されたようだった。

 

人の弱っている時につけこんで

悪い気もしたが、

 

こんな俺でも人の役に立つことが

出来た気がして、

 

自己満足に浸っていたりもした。

 

その後、

 

俺からは連絡するつもりは

なかったのだが、

 

毎日のようにメールや電話が

かかって来ていた。

 

当時は仕事にもまだ慣れていない

ところもあって、

 

なかなか相手をしてあげられ

なかったのだが、

 

半日連絡を絶つと、

 

物凄いヒステリックなメールが何件も

受信ボックスに溜まっていた。

 

『なんで電話出ないの!

信じられない!人でなし』

 

みたいなものばかり・・・。

 

そのうちに、

 

『死のうかな・・・』

『抗鬱剤や安定剤が効かない』

 

とか言い出してきて、

 

怖くなってきた俺は一切連絡を

しないようにしていた。

 

俺の事は、

 

勧めた病院の近所に住んでいる

事ぐらいしか言ってなかったし、

 

もう会う事もないだろうと思っていた。

 

ある日を境に、

ぱったりとメールも来なくなり、

 

もし本当に自殺でもしていたら・・・

なんて一抹の不安もあったが、

 

今時それくらいの事で自殺する奴も

いないよな・・・

 

なんて思う事にした。

 

メールが来なくなって

七ヶ月くらいだろうか。

 

俺は社内で片思いだった事務の美幸(仮)

付き合う事になった。

 

実は、パニック発作の女も

割と自分のタイプだったのに、

 

冷たい対応をしてしまったのも、

片思いの美幸の存在があったからなんだ。

 

本当に付き合えるとは

思っていなかったから、

 

凄く舞い上がっていた俺は、

 

毎晩、仕事が終わって部屋に戻ると、

美幸とのメールや電話で夢中だった。

 

あの夜も・・・

 

彼女とメールで会社の愚痴なんかを

話し合っていた時だった。

 

メールの最中に俺の部屋の窓から、

 

『コツン、コツン』

 

と小石が当たったような音がする。

 

最初は全然気にもならなかったし、

無視をしてメールをしていた。

 

すると今度は、

 

『パン!パンッ!』

 

と平手で窓を叩く音がする。

 

さすがに俺もなんだろうと、

カーテンを開けようと窓に近づくと、

 

「・・・るんでしょ・・」

 

と微かに人の声が聞こえた。

 

・・・えっ?!とひるんだ俺は

その場に立ち尽くすと、

 

今度ははっきりと聞き覚えのある

女の声で、

 

「そこにいるんでしょ!!」

 

俺はカーテンにかけていた手を慌てて戻し、

窓から離れた。

 

血の気が引く感じって、

ああいうことを言うのだろう。

 

気が動転した俺は部屋を飛び出し、

車で美幸の家に駆け込み、

 

その日は泊めてもらうことにした。

 

次の日、

俺は深く考えた。

 

どうして今頃彼女は会いに来たのか?

どうやって俺の自宅が分かったのか?

 

そもそも、彼女とはあの日

一晩だけしか会っていない。

 

その後もメールや電話の会話はしたが、

大した話ではない。

 

また会いたいと頼まれた事もあったが、

やんわりと断ってきた。

 

昨日は突然の訪問で取り乱したが、

 

よく考えてみると別に彼女が

自宅に来たからとはいえ、

 

別段問題はない。

 

もしかしたらまた何か問題が発生して、

相談しに来ただけかも知れない。

 

それを聞いてあげ、

今は本命の美幸がいることを伝えれば、

 

彼女もまた訪問してくる事もなかろう・・・。

 

その晩、

俺は部屋で彼女を待つ事にした。

 

会社には我がままを言って、

少し早めにあがらせてもらうように頼んだ。

 

すると上司は自分の仕事さえ終われば

いつでもあがっていいと言ってくれた。

 

その日はかなり頑張って

自分の業務内容を全て消化し、

 

いつもより二時間も早めにあがった。

 

部屋に戻ってまず彼女に

メールを送ってみたが、

 

メールは送れず帰ってくる。

 

電話は「現在使われていません」

のアナウンスが流れる。

 

きっと携帯を買い替えたのだろう。

 

彼女が訪問したらすぐ気付くように

カーテンを開け、

 

テレビを観たり、

週刊誌を読んで待った。

 

しかし、

一向に彼女は現れない。

 

仕事で気合を入れ過ぎてしまったせいか

眠くなってしまったので、

 

豆電球だけ点けたまま眠ることにした。

 

ひょっとしたらもう彼女は来ないかな、

なんて思い、

 

ちょっと安心したりしながら

寝たのを覚えている。

 

(続く)部屋のドアに開いた穴 3/3

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