風俗嬢が男の背中に見たもの
デリヘルの風俗嬢から聞いた話。
久しぶりの新規の予約に、
勇んでラブホテルに向った彼女。
待っていたのはサラリーマン風の、
いかにも神経質そうな男だったらしい。
部屋に入ると、
男は大声で「脱げ!」と命じた。
不安が錯綜し、
彼女の愛想笑いが消える。
※錯綜(さくそう)
複雑に入りまじること。
要望に応え衣服を脱ぎ捨てると、
男は顔を近づけ鼻を鳴らしながら、
「くせぇ~くせぇ~」
と繰り返す。
震える身体を必死に抑え、
男にシャワーを勧める彼女。
男は浴室でもベッドでも、
興奮しなかったそうだ。
世話しなく両指を動かし、
剥き出しの歯をギリギリと擦り合わせる男。
彼女はただ時間の過ぎ行くことを
祈っていた。
男の背中に引掻いた様な
ミミズ腫れを見つけた彼女。
途端、一気に血の気が引く。
ようやく時間になると、
そそくさとホテルを後にしたらしい。
男は何度も延長を交渉してきた様だが、
彼女は頑なに断った。
「だってね、あの背中のキズ・・・
『ニゲテ』って読めたんだもん」
数年前にその地域で発生した、
デリヘル嬢惨殺事件。
実はまだ未解決なのだそうだ。
(終)
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