見覚えのある風景
俺が小学校5年か6年の頃だったと思う。
国道端に潰れた小さいタコ焼き屋があった。
店内には、手打ちのパチンコ台や
大量のエロ本が捨ててあって、
それ目当てに窓をこじ開けて、
中に侵入するガキが結構いた。
ある日、そんなガキの一人でKっていう奴が、
「あそこにスゲエ怖い写真がある」
っていう話をしだした。
「自分は写真を見てないけど、
見た奴がマジでビビって学校を休んでる」
そんなことを、なぜか偉そうに語っていた。
それでその日の放課後、
俺とKと、あと何人かで、
そのタコ焼き屋に行くことにした。
サッシの窓から入ると床一面に
エロ本やマンガなんかが散らばっていた。
俺はエロ本に激しく惹かれたけど、
友達の手前、そんな素振りは全く見せずに、
「K~写真ドコや~」と写真を探し始めた。
Kは「この中や言うてたわ・・・」
と冷蔵庫を開けた。
中には何十枚という写真が入っていた。
どんな写真かは忘れたけど、
なぜか、チ○コを撮った写真もあった。
問題の怖い写真は、
すぐに見つかった。
風景を写してる写真の左下に、
めっちゃピンぼけで、
白い女の顔が写っている。
それがなんて言うか、
妙にペタンとしてて、
写真を切り抜いたみたいな感じ。
とにかく3Dっぽくない印象だった。
不気味だったのは、
その女の黒目のところが
縁取りだけ黒くて中が白い。
細い筆で描いた「○」みたいな瞳だった。
でも、小学生の俺らには、
チ○コの写真の方がインパクト圧勝で、
「うわーやばいでコレぇ」とか言いながら、
その写真を誰かのポケットに
そーっと入れる、
みたいなイタズラをしていた。
その後、お待ちかねの
エロ本タイムもあったりして、
5時頃には家に帰った。
部屋でジャージに着替えてる最中、
上着のポケットに
写真が入っているのに気づいた。
「やられた~」と思って見てみると、
あの女の写真だった。
あらためて手に取ってよーく見ると、
妙な感じがした。
女の背景に写っている風景に、
見覚えがあるような気がする・・・。
食後、居間でテレビを見てるときに、
フッと気づいた。
「あれ、家の2階の廊下にある
窓から見た景色やないか?」
すぐに階段を上がって、
その窓際へ立った。
怖いとかそんな気持ちはなく、
好奇心が勝っていたんだと思う。
窓から外を見ると、確かに
写真の風景とそっくりだった。
建物の種類や位置、電車の鉄橋、
遠くの山の形。
「べちゃ」
一瞬ピントが合わず、
何が見えているのかわからなかった。
視線を左下に移す。
白い瞳の女が、
ガラスにぺったりと貼り付いていた。
(終)