事故現場を撮った写真を現像してみたら
大学時代の友人に呼び出され、
スタバで会った時の話。
友人は学生の頃からカメラが好きで、
フリーのカメラマンとなった今では、
自宅で現像なんかもしているらしい。
フリーのカメラマンと言ったら
聞こえは良いが、
サラリーマンの俺からすると
フリーターみたいなものだ。
撮影した景色や芸能人の写真なんかを
雑誌社に買ってもらうような感じだそうで、
とても定職とは言えない。
そんな友人がスタバで、
俺に一枚の写真を見せた。
先日、その友人が自宅にいる時、
何かが衝突するような、
物凄い轟音を聞いたそうだ。
「事故だ!」
そう咄嗟に思った友人は、
カメラを片手に表へ出た。
現場は友人のアパートのすぐ近くの交差点で、
電信柱に激突した車の単独事故らしい。
この交差点は事故が年に一度くらいの
頻度で起きるとの事だ。
運転席側のドアがひしゃげ、
外からでも運転していた女性の
上半身が見えていた。
女性は既に意識は無いもようで、
ハンドルに突っ伏していて、
顔や表情は見えない。
友人はその事故の光景を数枚、
角度を変えてカメラに収めた。
誰かが呼んだらしい救急車と警察が
やっと到着したが、
女性は意識が無く、
車内の血らしきものの量からも、
きっと助からないだろうな、
と友人は思ったそうな。
こんな写真は安くしか売れないだろう
と思ったそうだが、
自宅に戻った友人は早速、
現像を開始した。
少しずつ鮮明になる写真を見た友人は、
酷く驚いたそうだ。
スタバでそんな話をしながら、
友人は一枚の写真を俺に見せた。
不気味な写真だった。
車を運転席側の側面から撮影した写真で、
運転席に座る女性が写っていた。
両腕をハンドルに被せるような感じで
ハンドルにもたれかかっているが、
その女性の表情だけは、
睨みつけるようなカメラ目線。
それだけではなく、
友人は他の写真も、
狭いテーブルの上に広げた。
全て同じ写真だった。
全てのその写真の女性が、
こちらを睨みつける写真。
気味悪くなり、友人に、
「なぜ同じ写真を何枚も現像したのか」
を訊ねてみた。
友人が言うには、
同じ写真を現像したつもりはなく、
他に色々な写真(景色など)が
収められてたはずのフィルムだった。
しかし、そのフィルムの全てが、
この女性の写真にすり変わっていた・・・
という事だった。
気味が悪いので、
お寺に持って行きたいから
一緒に来て欲しい・・・
という相談だった。
俺は変な事に巻き込まれたくなくて、
友人の誘いを断った・・・
(終)