上京した親友からの誘い

東京駅

 

俺には高校時代からのAという親友がいた。

 

少しクセのある奴だったが兄弟のようにいつも二人でいて、お互いを理解し合っていた。

 

目指す道はそれぞれ違ったが、「どんなに年を取ってもいつまでも一緒でいような」、と堅く誓い合っていた。

 

そしてAは東京の大学へと進学し、俺は地元の田舎大学へ行くことになった。

 

離れてからも俺達は互いに電話で連絡を取り合った。

 

俺もそこそこ大学生活を楽しんではいたが、Aの都会での生活は本当に楽しそうだった。

 

色んなサークルに入り、毎日合コン三昧で、とても勉強が手につかないような状態らしい。

 

そんなAの生活が俺は羨ましくて仕方なかった。

 

ある日、Aから「東京に来ないか?」と誘われた。

 

ちょうど夏休みだったし、以前から東京に興味を持っていた俺は、「是非行きたい!」と返事をした。

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しかし、その三日後に・・・

東京へ向かう新幹線の中でもずっと互いのことを話していたが、途中で携帯の電池が切れてしまった。

 

そこで初めて携帯の充電器を忘れたことに気付いた。

 

(・・・しまった!まだ待ち合わせ場所を聞いていない)

 

東京駅に着いてから公衆電話を探したが、いつも携帯から電話していたのでAの番号を憶えていなかった。

 

仕方ないので慣れない都会で携帯ショップを探し、やっとのことで充電することが出来た。

 

携帯を開くと、Aからの不在着信とメールが異常なくらい来ていた。

 

『どうしたんだ?何かあったか?』

 

『××前で待ってるぞ。早く来いよ!』

 

『俺の彼女も連れて来てやるよ!会いたがってたろ、お前』

 

『B(Aと同じ大学へ行った高校時代の友達)も来るってさ!みんなで盛り上がろうぜ!』

 

『おい、本当にどうしたんだ?一言くらい返事をくれ!』

 

メールを全て読み終わった俺はAが怒っていると思い、状況を訊くために先にBへ電話をした。

 

プルルル・・・ガチャ

 

「もしもし、Bだけど。何か用?」

 

何か用?

 

久しぶりに会うというのに随分素っ気ないではないか。

 

そのことをBに尋ねると、「会う?Aと三人で?俺はそんな話なんか聞いてないぞ」。

 

何かがおかしい・・・。

 

俺は、BにAのことについてもっと詳しく聞いてみた。

 

すると、意外な答えが返ってきた。

 

どうやらAは今まで俺に見栄を張っていたらしい。

 

Aは都会の生活に慣れることが出来ず、一人で居ることがほとんどだったそうだ。

 

講義もサボり気味で単位が取れず、最近は大学にさえ顔を出さなくなったらしい。

 

俺は急に心配になり、Bとの電話を切った後にすぐAに電話をした。

 

プルルル・・・

プルルル・・・

 

なかなか出ない。

 

プルルル・・・

プルルル・・・

 

ガチャ

 

やっと出た!

 

だが、妙に静かだ。

 

何の物音もしない。

 

俺はそのまま暫く待った。

 

やがて、獣の息遣いのような荒々しい音が聞こえてきた。

 

直後、「う゛ら゛ぎ り゛も゛の゛」

 

静寂の中にハッキリと、背筋が凍るような声が響いた。

 

この世のあらゆる悲しみと憎しみの込められた声。

 

それは、Aの声とはとてもかけ離れたものだった。

 

その後すぐ電話は切れた。

 

三日後、Aは山で首を吊った亡骸として発見された。

 

そしてAのバッグからは、“もう一人分の縄”が見つかったそうだ。

 

(終)

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One Response to “上京した親友からの誘い”

  1. 匿名 より:

    いや、そこは電話かけてきたんだから早まらずにじっくりと取り繕えば道ずれにできたんじゃないかな?

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