彼女は僕をどこへ連れて行こうとしたのか

公園

 

僕が小学4年生の時の話。

 

僕は小学校低学年までは、同じ学年の友達や高学年の兄ちゃんや姉ちゃん達と一緒になって公園で遊ぶことが多かった。

 

ドッジボールをしたり、鬼ごっこをしたり、野球をしたり。

 

夏には遠くにある大きなグラウンドへ行って思いっきり遊んだりもした。

 

ほぼ毎日、日が暮れるまで遊んでは、近くに住んでいる兄ちゃんに手をひかれて帰っていた。

 

だけど小学4年生になって兄ちゃん姉ちゃんのほとんどが中学生になると、公園に来なくなったせいでそういうことは一切無くなった。

 

たぶん部活やらなんやらで忙しくなったのだろう。

 

同学年の友達も、4月の初めの2週間くらいは公園で兄ちゃん達を待っていたりしたけれど、もう来ないと思ったのか公園に来なくなった。

 

でも僕は、梅雨が始まる6月くらいまでは公園で一人待ち続けていた。

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一人で遊んでいてそんなに面白かったの?

正直言うと、同学年の友達だけで野球をやっても、兄ちゃん達が投げる剛速球とか特大ホームランを見慣れていたので物足りないし、つまらなかった。

 

それに、なんだか公園に来なくなった友達に裏切られたような嫌悪感を感じていたから一緒に遊ぶ気にはなれなかった。

 

待ち続けて約1ヵ月が経つ頃、「今日もダメか」なんて思っていた夕方に、制服姿の全く見たことのない姉ちゃんが公園にやって来た。

 

見たことのない人だったから最初は不思議に思っていたけれど、彼女が「遊ぼうか」と言ってくれた時、ずっと待ちぼうけを食らっていた僕は嬉しくなった。

 

彼女とキャッチボールをしたり、地面に絵を描いて遊んだりした。

 

もう日が暮れそうになった時、僕は彼女に「もう帰る。今日は楽しかった」と言ったら、彼女は「もっと遊ぼうよ」と僕の手を取った。

 

彼女は遊んでいる最中はあまり口をきかなかったが、ここではやけに饒舌(じょうぜつ)になった。

 

「もっと面白い場所があるからもう少しだけ」と言ってきた。

 

「お母さんに怒られるからダメ」と言ったが、彼女は「もうちょっとだけ遊ぼうよ。もう少しだけだから」と言って手を離さない。

 

彼女の力がやけに強かったことを今でも覚えている。

 

彼女の目が真剣だったのと、お母さんに怒られるかもという恐怖心から、半ば振りほどく形になって僕はお礼だけを言ってその場から駆け出した。

 

次の日、その時の現場を友達に見られていて声をかけられた。

 

僕は「すごく楽しかったからお前らも来いよ」と言った。

 

すると、友達にこう言われた。

 

「お前一人で遊んでいてそんなに面白かったの?」

 

その日から公園で彼女を待ち続けたけれど、二度と来ることは無かった。

 

そして僕が中学生になったある日、沖縄へ修学旅行に行くということで、手始めに自分の街の戦時中の歴史を調べることになった。

 

街の図書館に出掛けて資料を漁っていたところ、古い写真が多く載っている本を見つけた。

 

その本は戦時中のこの街の学業や学生についてまとめられていた本で、「戦争中の学生はこんなに辛い生活を送っていたんですね~」みたいな作文を、写真を付けて文章を大幅カットして書けば楽だなと思いながらその本をペラペラめくっていた。

 

すると、その本の1ページに”とある写真”が載っていた。

 

その写真は、戦前に建てられた女学院を写していた。

 

建てられていた場所は、僕の通っていた小学校の近く。

 

この女学院は戦時中に空襲に遭い、丸ごと焼けてしまった旨が本に書かれていた。

 

そして、そこに写っていた女学生の制服こそ、僕が小学4年生の時に会った彼女が着ていた制服と全く同じものだった。

 

あの時、彼女は僕の手を取って一体どこへ連れて行こうとしたのだろうのか。

 

(終)

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