壁を叩く音の正体

友人は大学時代、

あるアパートに下宿した。

 

そこはかなり古かったけど格安な物件で、

住み始めてすぐ気になったことがあった。

 

夜遅く、たまにドンドンドンと

壁を叩く音がするのだ。

 

20分くらいその一定のリズムで、

叩き続ける音が止まない。

 

毎晩というわけでもないから

最初は無視していたが、

 

ある時に気づいた。

 

その音は必ず金曜日の夜にやって来て、

 

しかも決まった時刻に始まり、

決まった時刻に終わる。

 

それに気づいて、

急に気味が悪くなった。

 

そこは角部屋だから、

 

叩いている奴は、

隣の部屋の奴以外にありえない。

 

隣は誰かが住んでいるみたいだったが、

一度も顔を見たことがなかった。

 

根が小心な友人は、

文句を言いにも行けずにいた。

 

そしてまた金曜の夜、

いつもの時刻のアレが来た。

 

隣の部屋と接する壁に耳を横付けると、

確かにその壁からドンドンドンと音がする。

 

機械的な一定のリズムと強さで。

 

友人は気味が悪い分、

ムカついてきたので、

 

ダン!と壁を蹴ってやった。

 

二度三度と。

 

すると隣の部屋からも、

 

ダン!ダン!ダン!

と強く叩き返してきた。

 

友人は完全に頭にきて、

 

部屋を飛び出し、

隣の部屋を訪ねた。

 

玄関でブザーを鳴らすと、

そこの住人が出てきた。

 

暗い目をした男だった。

 

「どういうつもりだよ!

ドンドン壁を叩きやがって!」

 

友人が強い口調で言うと、

 

「何言ってんだ!

 

そっちが叩くから

叩き返したんじゃねえか!」

 

と男は言い返す。

 

さらに男は、

 

「今だってお前の部屋にいる奴が

叩いてるやないか!」

 

と言う。

 

友人は呆気にとられた。

 

男に引っ張られるように隣の部屋に入ると、

 

自分の部屋と接する壁からは、

ドンドンドンと音が鳴り続けていた。

 

次の週の金曜、

友人はB君を部屋に呼んだ。

 

B君は仲間内でも有名な、

霊感の持ち主だった。

 

そして夜。

 

いつものあの時刻に、

アレがやって来た。

 

ドン!ドン!ドン!

 

音が鳴り始めてすぐにB君は言った。

 

「この部屋・・・

すぐ出て行った方がええわ」

 

その理由を尋ねると、

B君はなかなか答えてくれなかった。

 

それでもしつこく食い下がると、

 

「いやな・・・

 

そこの壁にシミが出来てるの、

わかるやろ?」

 

B君の指差す方向を見ると、

 

確かにはっきりとわかるシミが

壁に出来ていた。

 

この部屋に初めて入った時、

 

壁紙は張り替えていて、

こんなシミは絶対なかったはずなのに。

 

「そこのシミの前やけど・・・

 

頭から血を流した女の人が正座してて、

ずっと壁に頭を打ち付けとる。

 

ドン!ドン!ドン!て」

 

(終)

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