風邪をこじらせた日の出来事

猫

 

この間、風邪をこじらせて会社を早退した。

 

一晩寝たら治ると思っていたが、次の日に目が覚めたら体が動かなかった。

 

枕元のポカリを飲むのがやっとで、這うことも出来ない。

 

カバンの中で携帯が鳴っていても、そこまでもたどり着けない。

 

そのうち目の前が真っ白になってきて、「ああ、これヤバい・・・」と思いつつ意識が飛んだ。

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猫が起こしにやって来たが

すると、おもいっきり鼻を噛まれて目が覚めた。

 

忘れていたが、俺は一人暮らしで猫と住んでいる。

 

不規則な仕事なので、こいつのメシと水は3日分くらいストック出来る自動給餌機を使っているのだが、起こしに来たということはメシが無くなったのだろう。

 

それに、トイレ掃除もしていない。

 

「これはいかん」と思って、死に物狂いで布団から這い出した。

 

時々ふっと意識が途切れたが、その度に猫に噛まれて覚醒していた。

 

なんとか部屋の真ん中まで来たところで、また携帯が鳴った。

 

電話に出ると、会社の同僚だった。

 

何か言っているが、全然頭に入ってこない。

 

とにかく体が動かないことを伝えたところで、今度は本当に意識が飛んだ。

 

次にハッキリと目が覚めた時は病院にいた。

 

医者の話を聞いて驚いたが、俺は過労と栄養失調から風邪がこじれて肺炎になりかけていたらしい。

 

さらに、早退した次の日と思っていたら、既に3日も経っていた。

 

どうやら熱で意識がぶっ飛んでいたらしい。

 

同僚が来て救急車を呼んでくれなかったら本当に死んでいたそうだ。

 

付き添っていてくれた同僚に礼を言った後、猫の世話を頼んだ。

 

迷惑とは思うが、メシと水とトイレの始末さえしてもらえば後は何とかなるからと言ったら、同僚が少し変な顔をした。

 

「いや、猫いなかったぞ?というか、猫の物なんか無かったぞ?」

 

覚えていないが救急車で運ばれる前、俺はずっと猫のことを言い続けていたそうだ。

 

だから世話をしようとしてくれたそうだが、猫もいなければ給餌機もトイレも見当たらなかったらしい。

 

「仕方ないからコンビニで猫缶買って開けてきたけどさ」

 

そんな訳ないだろ、と言いかけてゾッとした。

 

なぜ忘れていたのか分からないが、猫はもういなかった。

 

先月、車に轢かれて死んで、あいつの使っていたも物を全部処分していた。

 

そのことを言ったら、今度は同僚が青くなった。

 

なぜなら、俺が電話に出た後ろで、猫がでかい声で鳴いていたそうだ。

 

今朝退院したばかりだが、しばらくしたら墓参りに行くことにした。

 

(終)

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