村の乞食が生き延びていく為に
これは、『日本残酷物語』という、民俗学系統の本に載っていた実話である。
明治以降も、乞食に対する対策は放置されていた。
しかし、彼らが辛くも生き延びられたのは、昔の村々では現在ほど乞食を忌み嫌わず、村の成員として恵み物を絶やさなかったからである。
ある村で、女乞食がしきりにイジメられるのに義憤を感じた若者がこれを庇い止めると、女乞食はそれを喜ばなかった。
なぜなら、イジメたりからかったりするのは、憎んでのことではなく、愛してのことだと。
そうされることにより、怒ったり泣いたりのリアクションを取るのも演出の一つで、人々はそれにより彼女を意識し、食べ物を与えた。
ところが、女乞食へのイジメが止んでしまうと、村人は彼女を意識しなくなり、食べ物も恵まなくなったのである。
この話を読んだ時は、やりきれなかった。
(終)
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