山の中で見かけたスーツ姿の若いOLさん
大学生になったばかり頃、山の中でスーツ姿の若いOLさんを見かけた。
そのOLさんは、山を登っているというよりウロウロしている感じに見えた。
手にはロープらしき物と、木の棒を持っていた。
俺は「まさか自殺?」と思ってビクビクしたのだが、勇気を出して「どうしたんですか?何か探してるんですか?」と声をかけた。(可愛かったので下心が少々あった事は認めるが・・・)
天使のように現れたオッチャン
しかし声をかけた瞬間、OLさんは「お~ま~え~が~!!」と叫んで木の棒を振り回し、凄い勢いで追いかけて来た。
もちろん俺はダッシュで逃げた。
だが、OLさんはどんどん追って来る。
新手の妖怪か何かか?と思うほど、かなり速い。
俺は、「ヤバイ!このまま捕まって殺されるかも」と思っていると、下から山を登って来るオッチャンを発見した。
この瞬間、俺にはオッチャンが天使に見えた。
オッチャンに向けて「助けてー!」と必死に叫ぶ俺。
棒をブンブン回しながら「待てー!コラー!おまえー!」と叫ぶOLさん。
その状況を見て固まるオッチャン。
三者三様だ。
オッチャンは一瞬怯んだが、勇者魂に火がついたのか、山の坂道を爆走して来るOLさんをタックルするような感じで押し止めた。
登山しているからか、さすがに足腰は強いようだ。
その後、オッチャンはOLさんを落ち着かせて説得し、そのまま山の麓まで送ってくれた。
OLさんの話によると、仕事のストレスや職場の人間関係に悩み、さらには付き合っていた彼氏は別の女と浮気していて、それを責めると捨てられて自暴自棄になっていたらしい。
えぐえぐと泣きながら話すOLさんを優しく諭すオッチャン。
「辛かったらそんな仕事辞めちゃいなよ。まだ若いし、やり直せるよ。嫌な事があったらここに遊びに来なさい。いつでも歓迎するから」
オッチャンはそんな風にOLさんに語りかけていた。
その間、俺は何もすることがなかったので、オッチャンがくれたトマトを食っていた。
本当に美味かった。
そして帰りがけにオッチャンは、俺とOLさんにキュウリとトマトをくれた。
ちなみに、そのOLさんとはその後は期待するような事は何もなかった。
だが、追いかけられた時は本当に怖かった。
天使のように現れたオッチャンには色々と感謝している。
(終)
これ怖い話か?