急死した父はきっと私を呼んでいた
私の父は、近所の公園を朝の散歩中に心臓発作で亡くなった。
その日の朝、父はまだ散歩から家に帰っていなく、私は遅刻しそうなギリギリの時間で自転車にまたがった。
その瞬間、学校と反対側にある、父が散歩している公園にどうしても行きたくてたまらない気持になった。
(でも今日は試験だから)
(いや、ちょっと行くくらいなら)
(でも試験があるし)
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心の中で押し問答の末、学校へ行くことにした。
その道中、私を追い越した救急車が私の行く手を阻んだ。
「もう!!」と苛立ちながら、急いで駅へ向ってギリギリで到着したのに、自転車置き場の自転車をバタバタバタと倒してしまったり、こけそうになったり・・・。
“とにかく私を学校に行かせまい”と、誰かが止めている感じだった。
そして試験中、担任の先生から父が亡くなった事を知らされた。
聞けば、私が行くか行かないか葛藤していた時間に公園で倒れていたそうで、私の行く手を阻んだ救急車に父が乗っていたという。
あの時、父はきっと私を呼んでいたんだ。
父は誰にも看取られず逝ってしまった。
それに、公園で散歩していたので身元を確認するものを何も持っていなかった。
結局は父が首に巻いていたタオルに、宣伝用の名前が入っていた近所の酒屋のおじさんが身元を確認してうちの父だと判明した。
なんで私はあの時に公園へ行かなかったのだろう・・・と、20年以上経った今でも後悔している。
(終)