病院に行ってきた

 

クラスメイトの藤原君は常におかしい。

 

そんな彼と昨日、

病院に行って来た。

 

ヒロミちゃんが怪我で入院していたので、

お見舞いに行ったのだ。

 

決して、藤原君がおかしいからと

精神病院に行ったわけではない。

 

学校が終わってから行って来たので、

面会時間ギリギリだった。

 

俺らは他愛ない話をし、

 

来週には退院するというヒロミちゃんに

安堵しながら帰ろうとした。

 

その時、

 

「ねえ佐倉、

折角だから探検しよう」

 

と、藤原君があり得ないことを

言ってきた。

 

もちろん俺は断固拒否した。

 

すると、

珍しく藤原君は引き下がり、

 

「なら僕だけで行ってくるよ。

ヒロと浮気すんなよ?」

 

と、さっさと病室を出て行った。

 

意外な展開に拍子抜けしたが、

有り難い事この上なかったので、

 

俺はお菓子を食べながら

藤原君の帰りを待っていた。

 

しかし、いつまでも

藤原君は帰って来ない。

 

面会時間ももう終わるし、

だいぶ心配になってきた。

 

そこで、優しい俺は藤原君を探しに、

恐る恐る夜の病院を歩き回ることにした。

 

「ふーじわーらーでてこーい」

 

小さな声で廊下でさりげなく

藤原君を呼ぶが、

 

やはり藤原君はいない。

 

真中まで進んだ辺りで行き止まりになり、

仕方なく俺は引き返そうとしたが、

 

「誰か探してるの?」

 

と、後ろから声をかけられた。

 

振り返ると看護婦さんがいた。

 

「はい、

友達が迷子になったみたい」

 

そこまで言って、

おかしいと思った。 

 

俺の後ろは行き止まり。

 

もちろん誰ともすれ違ってないし、

ドアもない。

 

じゃあこの人、

どっから来たんだ?

 

途端に怖くなって、

俺はダッシュした。

 

後ろから走る足音が聞こえる。

 

「廊ー下は走らーないでねー!」

 

声も聞こえる。

 

追いかけて来ている。

 

怖くなって無我夢中で走っていた

その時、

 

「何やってんの貴様」

 

藤原君が現われた。

 

人の心配をよそに、

ケロリとした様子だった。

 

「かかかかか看護婦があああ」

 

半泣きで説明するが、

藤原君は相手にもしてくれず、

 

「あのさあ。

 

人のことどうこう言ったり

余計な世話焼く前に、

 

その甘ったれた根性

なんとかしろよ、君は」

 

と、呆れたように言われた。

 

藤原君が心配だからじゃん!

と頭にきて言い返すが、

 

「ホント頭悪いね。

 

君が何もしなくても、

 

僕は僕で好きにやってんだから

余計なお世話だよ」

 

と、言われた。

 

そりゃそうだ、

と思った。

 

仕方なく俺は、

藤原君と病室に戻る。

 

すると、

 

「あ、もう面会終わりやってよ」

 

と、ヒロミちゃんに言われた。

 

ヒロミちゃんの横には、

さっきの看護婦さんがいた。

 

ゆっく~り、ゆっく~り、

看護婦さんが振り返る。

 

藤原君を放置して俺がダッシュで

帰宅したのは言うまでもない。

 

(終)

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