藤原君はおかしい

 

クラスメイトの藤原君は、

どうもおかしい。

 

と気付いたのは、

 

半年前くらいに、

 

たまたま席替えで隣りの席になった

時のことだった。

 

どのクラスにも一人はいる、

 

地味で無口でネクラっぽいのに、

何故か意外と友達が多い奴、

 

ってのが藤原君なのだが、

 

俺はあまり話したことはなかったし、

隣り同士になっても微妙に気まずかった。

 

だが藤原君は特に気まずそうな様子も見せず、

ひたすら机に消しゴムをかけていた。

 

内心『何してんだろ』と思ったが、

 

消しゴムが千切れるまで机を消している

藤原君の真剣さに圧倒され、

 

何も聞けなかった。

 

しばらくして授業が始まったが、

 

俺は藤原君の行動が気になって

チラチラ見ていた。

 

藤原君は山盛りになった消しゴムのカスを、

机の四隅に均等に盛り始めた。

 

ますます意味がわからない。

 

俺はついに小声で藤原君に尋ねた。

 

「藤原君、何してんの」

 

藤原くんの長い前髪から、

にんまり弧を描いた目が見えた。

 

「即席の結界。

 

キミは多分、うっすらとなら

見えるんじゃない?」

 

と言うと、

藤原君は目線を廊下に向けた。

 

俺も廊下に目線をやる。

 

そこで俺は見てしまった。

 

廊下に立つ男子生徒を。

 

教室のドアのガラス窓を通してだから

肩までしか見えなかったが、

 

首は極端にうなだれていて

気持ち悪かった。

 

「あれって、まさか・・・

隣りのクラスの奴とか、だよね」

 

「授業中なのに廊下にあんな風に

立ってる生徒がいると思うかい」

 

「・・・先生に立たされてるとか」

 

「キミは死んだほうがいいね」

 

藤原君はそう言うと、

ため息をついて突然立ち上がった。

 

「先生、便所」

 

先生の苦笑を背に受けながら、

 

藤原君はドアを開けて

廊下に出ていった。

 

そして、

 

相変わらず立ち尽くしている

男子生徒を通り抜けた。

 

男子生徒の身体は確かに見えるのに、

その身体を藤原君が通り抜けたのだ。

 

俺は喉が引きつって、

声も出なかった。

 

男子生徒をすり抜けた時、

藤原君はこちらを振り向き、

 

『ほらね』

 

とでも言うように、

ニヤリと笑った。

 

その表情の気味悪さを、

俺は一生忘れない。

 

藤原君が通り抜けた後も、

男子生徒は立ち尽くしていた。

 

うなだれたまま、

ずっと立っていた。

 

あまり見ていると、

そいつが顔を上げそうで怖かった。

 

俺は藤原君が戻って来るのを待ちながら、

ひたすら机に消しゴムをかけた。

 

無論、俺も藤原君を真似て、

消しゴムのカスを机の四隅に盛る為だ。

 

だが、消しゴムをかけているうちに

藤原君は戻って来て、

 

平然と教科書の肖像画に

鼻毛を書き始め、

 

いつの間にか、

廊下の男子生徒も消えていた。

 

あの男子生徒の、

 

恐らく幽霊がどうなったかは

わからないが、

 

とりあえずそれ以来、

 

何故か藤原君と俺は

仲良くなってしまった。

 

(終)

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