アヤカちゃん

 

クラスメイトの藤原君がおかしいことに

誰も突っ込まないのが、

 

一番おかしいと思う今日この頃。

 

俺は藤原君・・・

 

正確には藤原君の彼女のヒロミちゃんに、

女の子を紹介してもらうことになった。

 

やっと俺にも春が来ちゃった感じがして

かなり喜んでいたのだが、

 

女の子が恥ずかしがってるらしく、

 

藤原君とヒロミちゃんとその女の子と俺で

カラオケということになった。

 

ヒロミちゃんはともかく、

藤原君は邪魔以外の何者でもない。

 

そんなに俺の幸せが

許せないのだろうか。

 

とりあえず俺たちは、

本陣駅の近くにあるカラオケに行った。

 

「アヤカです。よろしくね」

 

紹介してもらったアヤカちゃんは

ヒロミちゃんのクラスメイトで、

 

ガッキーみたいな清純そうな

可愛い子だった。

 

しかも光栄なことに、

 

アヤカちゃんがヒロミちゃんに

俺を紹介してくれと頼んだそうだ。

 

幸せすぎる。

 

「とりあえず曲入れよか。

佐倉から入れえな」

 

ヒロミちゃんが何故かやたら

不機嫌な様子だが、

 

俺がミスチルを歌うと、

アヤカちゃんは可愛く拍手してくれた。

 

藤原君が中森明菜の曲を歌って

ホラーぽくてキモかったが、

 

アヤカちゃんが可愛くて

気にせずに済んだ。

 

そしてしばらく歌って、

飯でも注文しようかってなった時。

 

「ね、ヒロちゃんの彼氏さんは

霊感強いんだよね?」

 

と、アヤカちゃんが言い出した。

 

ヒロミちゃんは相変わらず、

不機嫌そうにうなずくだけだった。

 

「ねえねえ、アヤカもねー、

見える時あるよ?女の子とか!」

 

「そう。

 

なら佐倉はやめといた方が

いいんじゃない?

 

コイツよく呼び寄せるし、

腰抜けだから逃げるよ。

 

チェリーでビビりの寄付け屋とか

キモいよね」

 

チェリーは激しく余計な気がする。

 

しかも藤原君のがキモいと思う。

 

しかしアヤカちゃんは、

 

「えー?

 

じゃあアヤカが佐倉くん

守ってあげる!

 

まかせて!」

 

と、またしても可愛いことを

言ってくれた。

 

そして、

アヤカちゃんがトイレに立つ。

 

すると、

 

「だあー!!もう!!

 

あいつめっちゃくちゃ

うっといんやけど!!

 

何あのキャラ!

さぶイボ出るわ!」

 

と、ヒロミちゃんが叫び出した。

 

あまりの態度の変わり方に

ビビった俺だが、

 

藤原君もヒロミちゃんにうなずく。

 

「え、なんで?

てかヒロミちゃんの友達じゃ」

 

「ちゃうわボケ!

 

普段仲良くもないのに、

 

無理矢理佐倉紹介せえて

言うてきたんや!

 

あいつ男遊び激しいし、

あたしは嫌やったけど、

 

圭輔が・・・」

 

「僕が呼べって言ったんだよ。

 

佐倉がいつまでも名前通りに

サクランボじゃ可哀相だし、

 

それに・・・」

 

藤原君がニタリと笑う。

 

その瞬間、

悲鳴が聞こえた。

 

部屋にいたのに悲鳴が聞こえたのが

今も不思議だが、

 

直感でアヤカちゃんだと思った。

 

俺たちは女子トイレに走った。

 

とりあえずヒロミちゃんが中に入る。

 

するとすぐに、

俺と藤原君も呼ばれた。

 

「どうしたの!

アヤカちゃん!?」

 

アヤカちゃんはガタガタ震えて

座り込んでいて、

 

何も言わなかった。

 

俺は意味がわからず

周りを見渡した。

 

そして、

それに気付いた。

 

「うぎゃあああ!!」

 

みっともない悲鳴をあげて、

尻餅をつく。

 

鏡に女が映っていた。

 

ちょうどアヤカちゃんの座り込んでいる

真後ろ辺り。

 

もちろん実際には何もいない。

 

鏡にだけ映っている女。

 

真っ白な腕に黒髪。

 

ひび割れたような肌に、

貞子みたいにひどくうなだれて。

 

「な、な、何あれ」

 

ゆっくりゆっくり、

鏡の中の女が顔を上げようとした。

 

その時、

 

「あははははひゃははははは!」

 

アヤカちゃんが笑い出した。

 

気持ち悪い、

 

アヤカちゃんとは思えない

笑い方だった。

 

そしてその場に嘔吐して、

アヤカちゃんは意識を失った。

 

女はもう映っていない。

 

「♪真っ逆さーまーに・・・

墜ちてdesire・・・♪」

 

藤原君がさも楽しそうに、

小さな声で歌っていた。

 

こんな時にそんな歌歌うとか、

神経疑う。

 

俺は腰が抜けて立てないまま、

藤原君を見た。

 

「残念だったね佐倉。

 

女が見えるのはホントみたいだけど、

守ってあげるってのは嘘みたいだよ」

 

藤原君はクスクス笑った。

 

ヒロミちゃんはアヤカちゃんを

ビンタして無理矢理起こすと、

 

顔を洗わせて駅まで送りに行った。

 

俺はもうなんの気力もなく、

藤原君と部屋に戻ろうとした。

 

すると藤原君が、

 

「ああ佐倉、

女子トイレのドア閉めた?」

 

と声をかけてきた。

 

ああ、どうだったかなと

俺は振り向く。

 

するとそこには、

さっきの女が立っていた。

 

その後のことはよく覚えていない。

 

俺は無我夢中で走って

カラオケ屋を出て、

 

家に帰った。

 

アヤカちゃんとも、

それっきりだ。

 

藤原君と付き合っている限り、

幸せにはなれない気がした。

 

(終)

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