田舎村の風習 1/8

田舎の中でも超田舎。

 

俺の生まれ育った村は、

 

もうずいぶん前に市町村統合で

ただの一地区に成り下がってしまった。

 

これは、まだその故郷が

○○村だったときの話。

 

俺が小学6年生の

夏のことだった。

 

その日はソンチョというあだ名の

友達と2人で、

 

村の上に広がる

山の探険に行った。

 

ソンチョがなぜソンチョかというと、

 

何を隠そう、

当時の村長の孫で、

 

そのままソンチョと呼ばれていた。

 

村長の孫だからといって

別段真面目というわけでもなく、

 

どちらかというと不良で、

 

『立ち入り禁止』の立て札を見ると、

 

真っ先に「後で入ってみようぜ」

と言うような野郎だった。

 

俺はそんなソンチョが大好きで、

 

いつもソンチョの後ろを

追いかけていた。

 

「コンクリの道路は何もない、

けもの道って知ってるか?

 

クマとかタヌキとか、

危険な動物が通る道のことだ。

 

今日はその道を登ろうぜ」

 

使い古してかかとに穴が開いた靴が

歩きづらいらしく、

 

ソンチョは山に着くなり

裸足になった。

 

もちろん、

靴下なんか履いてない。

 

「ソンチョ、裸足で登るんか?

あぶないぞ、怪我するぞ」

 

「お前はいつもそうだ。

 

お前は車も通ってないのに

赤信号を守るんか。 

 

ジジイが、そんなんだと

危機管理能力が育たん

 

って言ってたぞ」

 

「ききかんり・・・

なんて?」

 

「俺もよう知らん。

大人の言葉じゃ」

 

ソンチョは、大人が使う言葉を

よく知っていた。

 

村長の爺さんのそばで

いろんな言葉を覚えるが、

 

一回しか聞いたことが無い言葉を

使いたがるもんだから、

 

その意味までは解っていなかったが。

 

「じゃあ、俺も裸足になる」

 

「それがいい。

 

けものが作った道を

通るんだからな。

 

靴を履いてたら逆に

怪我するかもしれんぞ」

 

ソンチョがそう言うなら、

そうかもしれん。

 

俺は靴下を履いていたが、

 

親指には穴が開いていたので、

それをさらに破り腕を通して、

 

今でいう、アームウォーマー

みたいな感じにした。

 

「どうだソンチョ、

完全装備だ」

 

「いいな~それかっこいいな。

今度、俺もやってみようかな」

 

「怒られるけどな」

 

ソンチョと俺は笑いながら、

 

コンクリ道路から脇に抜ける

山道へと入った。

 

ジジババも登る道だから、

これはけもの道ではない。

 

どんどん登って、

 

辺り一面背の高い木しか

見えなくなった頃に、

 

ソンチョが右を指差した。

 

「こっちだ。

こっちがけもの道だ」

 

「木ぃしかないぞ。

 

それに、うるしの葉っぱが

生えとるぞ。

 

うるしは触ったらかぶれるから、

俺はいやじゃ」

 

「お前はまたか。

 

自分で完全装備って

さっき言ってたじゃろが。 

 

俺の第六感じゃ。

 

こっちにけもの道がある」

 

「第六巻?

なんかの本か?」 

 

「俺もようわからん」 

 

「なんだそりゃ」

 

今思えば、あの時のソンチョの

『第六感』の使い方は合っていた。

 

鼻で笑ってごめんな、

ソンチョ。

 

「ほれ見ろ、

 

けものが通った跡が

あるだろ?

 

けもの道じゃ」

 

「ホントじゃ。

道があるなぁ。

 

ジジババは通らんし、

けものが作った道なんじゃろな」

 

「行くぞ。

 

俺とはぐれたらお前、

死ぬからな。

 

腕の装備は役に立たん。

 

もうお前、うるしで

かぶれとるし」

 

「ホンマじゃ!

手の甲がかぶれてやがる!」

 

俺は爪で手の甲に

バッテン印をつけて、

 

「これであと一時間はかゆくない」

 

とソンチョの隣を歩いた。

 

実はちょっと怖かった。

 

太陽の光は森のカーテンで遮られ、

まだ昼前だというのに薄暗かった。

 

けものが通る道なら、

クマと出会ったらどうしようか。

 

そういえば母ちゃんが、

 

鈴はクマ避けになるって

言ってたな。

 

『ソンチョは持ってきてるか?』

 

とソンチョに聞きたかったが、

 

『またお前は・・・』

 

と言われるのが

目にみえてたのでやめた。

 

それにそのけもの道は、

 

進むにつれて不思議と

人間が作った道のように

 

歩きやすくなっていった。

 

「足の裏が痛くなくなったなぁ。

けもの道はもうおしまいか?」

 

「うーん、おかしなぁ。

 

けもの道が、途中から

普通の道になってんなぁ。

 

クマさんはここらで

飽きてしまったんじゃろか」

 

どういうわけかはわからないが、

 

どうやら本当に

けもの道は終わったらしい。

 

その証拠に、

目の前に石段が見えた。

 

けもの道は終わったが、

逆に心が躍った。

 

こんな場所は知らない。

 

聞いたこともない。

 

この石段の上には

何があるんだ?

 

「よし、競争じゃ!

 

先に上に着いたほうが

山のボスじゃ!」

 

「待って、ソンチョ!

ずるいぞ!」

 

『よーいどん』も言わず駆けだした

ソンチョに勝てるはずもなく、

 

今日のボスはソンチョに決まった。

 

しかし、

石段を登りきった俺達は、

 

そんな些細なことは

すぐに忘れることになる。

 

そこには小さな神社があった。

 

正確には『神社だった建物』

になるんだろうか。

 

入口の鳥居にはツルが巻きつき、

鳥居の形の植物が出来上がっていた。

 

鳥居をくぐると

左右に木造の小屋があり、

 

正面には本殿が

こじんまりとたたずんでいる。

 

塗装が完全にはげた灰色の本殿にも

ツルが伸びていたが、

 

本格的な浸食は免れていた。

 

(続く)田舎村の風習 2/8へ

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