田舎村の風習 2/8

「神社だ!

 

ソンチョ、こんなん

この村にあったんか?」

 

「俺も知らんて!

 

たぶん、

俺のジジイも知らんぞ。

 

村長が知らんのだから、

誰も知らんということになる!

 

こういうのなんて言うか

知ってるか?」

 

「知っとるぞ。

秘密基地じゃ!」

 

ぱん、とハイタッチをすると、

俺達は本殿の階段を上った。

 

本殿の神様を祀ってある部屋は

格子状の木で囲まれていたが、

 

南京錠は錆びて

今にも取れそうになっていた。

 

「おい、中に入るぞ」

 

「中に入るって、

錠がしてあるぞ。

 

それに、

ここは神様の部屋じゃろ。

 

入ったらいかんて」

 

「ここは俺達の秘密基地じゃ。

神様なんかおらん。

 

それに、

こんなもんはこうじゃ!」

 

ソンチョは思いっきり、

南京錠をひっぱった。

 

南京錠はバキッと

簡単に取れてしまい、

 

格子木の扉が

ぎぎぎと音を立てて開いた。

 

太陽の光は、

部屋の中までは届いていない。

 

目を凝らしても真っ暗で、

奥に何があるのか見えなかった。

 

「んじゃ、入るぞ」

 

「むりだよソンチョ、

これは怖いよ。

 

怒られるよ」

 

「怒られるって誰にじゃい。

 

この場所を知ってるのは

俺達二人だけじゃ。

 

中に入るぞ。

 

お前は俺の後ろに

ついてこい」

 

部屋の大きさは、

12畳ぐらいだろうか。

 

そんなに広いとも感じなかったが、

 

怖がっているせいで

なかなか奥に進めずにいた。

 

ソンチョも実は怖かったみたいだが、

 

俺の手前、強がって

見せていたんだと思う。

 

暗闇での裸足は危険だ。

 

釘が落ちてたら

痛いじゃ済まない。

 

一歩進んでは立ち止り、

 

「へぇ、こうなってるのか」

「まだ目が慣れん」

 

とか軽口を叩いていたが、

 

一気に奥に行く勇気が

無かっただけ。

 

「ようやく目が慣れてきたな。

奥に何か見える」

 

「ソンチョ、

あれは神様と違うんか。

 

あの木の箱の中に

神様が住んでるんだろ」

 

「オバケが出ないなら

神様だって出ないんじゃ!

 

ほんと怖がりじゃ、お前は」

 

ソンチョは、

今度は強気に歩を進め、

 

奥に祀ってあった

木の箱の前までやってきた。

 

今だからわかることだが、

 

本当なら神社には

鏡や矛なんかが祀られているらしい。

 

蛇足になるが、

これはヨリシロと言って、

 

神様が現世にいる間の

仮住まいにするとか何とかで。

 

でも、その部屋には

木の箱しかなかった。

 

しかも床にべた置きで、

 

とても祀ってあるようには

見えなかった。

 

「ソンチョ、

その木の箱なに?」

 

「わからん。

でも上に穴が空いちょる。

 

お前、手ぇ入れてみるか」

 

「いやじゃ。

そんなんするぐらいなら帰る。

 

・・・ソンチョ、

それはアカンて。

 

持ったらアカンて」

 

ソンチョは木の箱を持ち上げると、

全力ダッシュで部屋を飛び出した。

 

「置いてかないで、

ソンチョ!」

 

「お日様の下で見ないと

何かわからん。

 

お前も早く来い」

 

部屋を出て、

あらためて木の箱を見ると、

 

木の箱は真っ黒に

染められており、

 

上辺だけちょうど片手が入るぐらいの

穴が開いていた。

 

穴の中を覗いてみたが、

箱の中も真っ黒で何も見えない。

 

たとえお日様の下でも、

 

この箱の中に手を入れるのは

はばかられた。

 

ソンチョは箱を持ちあげ

上下にぶんぶんと振ると、

 

中でカシャカシャと音がした。

 

「何か入っとるな」

 

「もう戻そうよソンチョ。

だれか来たらどうするんじゃ」

 

「誰も来ない!

ここは秘密基地だと言ったろが!

 

で、どうする。

 

どっちが手ぇ入れるんか」

 

「俺は嫌じゃ。

 

ソンチョが持って来たんだから、

ソンチョが手ぇ入れろ」

 

「俺かて嫌じゃい。

 

便所虫が入ってたら

どうするんじゃ、

 

ばっちぃ。

 

どっちも嫌なら

ジャンケンしかなかろ」

 

最初はジャンケンも嫌だと

俺は食い下がったが、

 

こういうときのソンチョは

恐ろしく頑固だから、

 

結局俺が根負けして、

ジャンケンすることになった。

 

案の定、俺が負けた。

 

不思議なもので、

 

絶対に負けたくないと

思っている時ほど、

 

ジャンケンは弱くなるものだ。

 

「便所虫入ってたら、

 

俺、本気でソンチョのこと

嫌いになりそう」

 

「もし入ってたら

俺は逃げるからな。

 

便所虫だけは苦手じゃ」

 

「手ぇ入れるぞ・・・

 

なぁ、ホントに入れないと

アカン?

 

アカンよな、

ジャンケン負けたしな。

 

あ、なんか入ってる。

 

なんじゃこれ、

木の板じゃ」

 

箱から手を抜き出すと、

 

かまぼこの板ぐらいの大きさの

木の板だった。

 

その板には、墨で『小鳥遊』

と書いてあった。

 

「ことり遊びってなに?」

 

とソンチョに尋ねたが、

ソンチョもわからなかった。

 

後でわかることだが、

 

これは『ことりあそび』ではなく

『たかなし』と読む。

 

だれかの名字だ。

 

「ソンチョ、

まだたくさん入ってるぞ。

 

みんな同じかなぁ」

 

「今度は俺が取ってみる・・・

お、次は『山口』じゃ」

 

そうやって交互に一枚ずつ

木の板を取り出した。

 

前田とか三瓶とか、

 

人の名字が書かれた

木の板ばかりだった。

 

それを地面に並べて、

 

「なんぞこれ?」

 

と二人で頭をひねっていた。

 

(続く)田舎村の風習 3/8へ

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