ぐるぐる 2/4

「それどころか、

 

おばあちゃんも若い時に

聞いたことあるって言ってたからね。

 

ぐるぐるはそんだけ長生きな

怪談話ってこと」

 

俺の背後から気味の悪い

笑い声がする。

 

それはまるで女の子らしからぬ

笑い方だった。

 

「面白いと思わない?

ぐるぐる。

 

この街だけに伝わる都市伝説だし、

長生きだし、

 

それでいてずっと語り継がれてる

わけじゃないし。

 

途切れ途切れに、

ある時期になるとぽんと顔を出すの。

 

思い出したように。

 

・・・ねえ、それって一体、

何でだと思う?」

 

完全にスイッチが

入ってしまっているようだ。

 

こうなるともう、

非力な弟では止められない。

 

K「え、俺?いや、そんなん

分かんねーし知らねーし・・・」

 

「ま、そりゃそっか・・・。

 

あ、心配しなくても、

帰りは私が漕ぐからね。

 

あー私って、

すっごい優しいお姉さん!」

 

そりゃ帰りは楽だからだろ。

ゆるくても下りだし。

 

しかしながら姉貴は、

 

ぐるぐる様に関して

俺より多くのことを知っているようだ。

 

しばらくして、ようやく俺と姉貴は

南中山の入り口に辿り着いた。

 

車が入れる道もあるが坂が急で、

ここから自転車は荷物になるだけだ。

 

その辺の電話ボックスの

隣に停めておく。

 

「「こりゃあ、なんちゅうやまじゃあ・・・!」」

 

二人で夜の南中山を見上げ、

 

ここに来る人が必ず想像すると言われる

お決まりのギャグをハモる。

 

と言っても、

 

それほど何かが特徴的な

山でも無いのだが。

 

唯一、ぐるぐる様が出るという

噂を除いては。

 

車が通る道路の方は使わず、

 

俺たち二人は歩行者用の階段を使って

山を上り始めた。

 

俺らが自転車を降りたのが

山の南側で、

 

ぐるぐる様は北側の斜面に出るのだと

姉貴が言った。

 

自転車を漕いで居た時には

ずっと聞こえていた車の走行音が、

 

今は木の葉の擦れ合う音や

鈴虫の鳴き声に取って代わっている。

 

俺はずんずんと前を行く

姉貴の後ろに、

 

まるでコバンザメの様に

ぴたりと張り付いていた。

 

「今、小学校でも、ぐるぐるの噂って、

流行ってんでしょ?」

 

不意に前を向いたまま

姉貴が俺に尋ねる。

 

俺は「おう」とだけ返した。

 

流行っていると言えば流行っている。

今話題のたまご型携帯ゲーム程ではないが。

 

「それって、どんな噂?」

 

K「どんなって・・・、なんか、

色んな話がごっちゃになってて・・・、

よう分からん」

 

すると姉貴はぱっと振りかえり、

俺の顔面にライトの光を当てて、

 

「そう、それなんよねー。

私のとこでもよく話は聞くんだけど。

 

最近のは一貫性が無い、

って言うかねぇ。

 

だから、お母さんとか、

 

周りのじいちゃんばあちゃん達にも

訊いてみたんだけど」

 

K「姉ちゃん眩しい眩しい」

 

「出来るだけ多くの話を集めてさ。

集計してみたわけ。

 

そしたらある程度、

特徴が分かったんよ。

 

例えば容姿とか居場所とか、

あと挙動ね」

 

K「眩しいって」

 

姉貴は俺の話を聞いてくれない。

 

「容姿は知れた通り。

 

真っ黒で、

ぐるぐるな身体。

 

片腕は無し。

 

とあるおじいちゃんなんかは、

 

黒いのは火傷の跡だって

言ってたけど・・・。

 

場所は、さっき言った

北側の斜面ね。

 

挙動は、

特に何をするわけでもない。

 

人を呪ったりはしないし、

追いかけて来るわけでもない」

 

K「まぶ・・・」

 

「ただ、姿が異様なだけ。

怖さはあるけど危険では無いから。

 

だから、世代間の間で

ちゃんと伝わって行かないのかもね。

 

その場だけで終わっちゃう

って言うか。

 

・・・おっと?

あー、めんごめんご」

 

姉貴はやっと懐中電灯を

俺から逸らしてくれた。

 

その間、俺はずっと

サーチライトに照らされた

 

怪盗ルパンみたいな体勢を

していたわけだが。

 

「あんたはその辺どう思う?」

 

俺はまた返答に窮してしまう。

 

当時の俺は基本的に

姉貴に付いていけてなかった。

 

K「・・・ってか俺、

ぐるぐる様の姿知らないし」

 

「あれ、そうなん?それじゃあ、

見てからのお楽しみってことね」

 

そう言って、

 

また姉貴はずんずんと

階段を上って行った。

 

階段の途中で俺たちは、

 

山をぐるりと回る横道に逸れて、

山の北側へと回った。

 

しばらく歩くと、細い道から

少し開けた場所に出た。

 

姉貴がライトの光を左から百八十度、

ゆっくりと右へと回す。

 

「ここだね」と姉貴が呟く。

 

辺りは靴を隠すくらいの

高さの雑草と、

 

うっそうと茂る

ナラの木に囲まれていた。

 

K「・・・なあ、見える?」

 

俺は恐る恐る尋ねる。

 

「居たら見えるでしょ。

私も、あんたも」

 

一寸先も見えないほどではないが、

辺りは大分暗かった。

 

街の明かりも星の光も、

 

頭上まで伸びる木々の

枝や葉に遮られ、

 

ここまで届いてるのは

ごく僅かだ。

 

虫の鳴き声。

木々の囁き。

 

目はラク出来るが、

耳は忙しい。

 

(続く)ぐるぐる 3/4へ

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